前稿までのように日本史を俯瞰してきたとき、権力が外から大きな力で打撃されないかぎり倒壊しない理由が、理解できるだろう。権力を握るとは、取りも直さず徴税システムを手中に収めることであり、徴税システムを手放さないかぎり権力は権力たりうるのだ。 また、こう考えてきたときに、「権力は必ず腐敗する」という言葉の意味も腑に落ちる。現場の徴税吏がいくら汗をかくかにかかわらず、元締めである権力者の側から見れば、徴税システムとは一種の不労収入だからだ。平安の貴族たちは、律令制を蚕食して自分たちに都合のよい利権システムへと作り替えていったが、同じことは徴税システムが存在するかぎり原理的にいつでも起こりうる。 われ