辰巳ダムは、金沢市中心部から車で約30分走ると見えてくる。緑が繁茂し、ダムの壁が見えなければ、そこがダム湖だとは気がつかない(冒頭写真)。石川県による最初の構想では、ここを水没させたうえで、文化遺産「辰巳用水」の取入口も破壊するはずだった。その計画は、住民による情報開示請求と住民監査請求で打破された。それはどんな運動だったのか。約40年に及ぶ辰巳ダム建設反対運動の記録集「うつくしき川は流れたり」(2019年発行)を手がかりに、運動を担った人々に話を聞いた。 辰巳用水。それは、加賀藩主のもとで江戸時代に築造された。金沢城の「辰巳」(東南)方向から流れる犀川(さいがわ)から取り入れ、河岸の台地の縁