3月30日、アーティゾン美術館にて「ブランクーシ 本質を象る」が始まった。彼の創作活動の全貌を紹介する展覧会は「日本の美術館では今回が初めて」と聞き、驚いてしまった。というのもブランクーシは日本人に愛されているイメージが強い。 アーティゾン美術館が所蔵する初期の代表作《接吻》は、前身のブリヂストン美術館時代から愛すべき名品として親しまれている。ひとつの石膏の塊に、彫り込まれた2人の人物。この2人は夫婦だろうか、恋人だろうか。熱く抱擁し、顔をぴったりと寄せ合い、唇を重ね合わせている。石膏の質感を残しながらも、互いを抱きしめる腕の“ぐにゃり”とした表現など、柔らかさを感じさせる造形が親密で心地いい