森下知幸監督といえば、知る人ぞ知る高校野球の名将だった。 その実績は、高校野球の歴史にしっかりと刻まれている。選手時代に浜松商業の主将として1978年春の選抜甲子園で優勝を果たし、監督としても甲子園で通算13勝を挙げ、2007年春には常葉菊川を優勝に導いた。選手、監督の両方で甲子園優勝を経験したのは、森下さんが史上19人目になる。 だが、そうした名誉や肩書きをひけらかさない、むしろまったく興味のない人だった。とにかく野球が好き、野球を教えることが生き甲斐、教え子たちがうまくなっていくのを見ることが喜びという、純粋な愛情にあふれた指導者だった。 私は15年ほど前、取材をきっかけにお付き合いが始ま