今回は、「水戸学の三傑」について、その代表的著作を中心に据えて紹介していこう。最初に、藤田幽谷(1774~1826)であるが、寛政3年(1791)に後期水戸学の草分けとされる『正名論』を著した。その中で、「幕府、皇室を尊(たっと)べば、すなはち諸侯、幕府を崇とび、諸侯、幕府を崇べば、すなはち卿・大夫、諸侯を敬す」と述べている。 つまり、幕府(将軍)が皇室(天皇)をうやまって大切にすれば、それを見た諸侯(大名)は幕府を尊重し、諸侯が幕府を尊重すれば、それを見た家臣(藩士)は諸侯を尊敬すると説いた。こうした秩序体系に基づき、初めて臣として守るべき道義と節度を説く名分論に基づき、秩序安定の道徳を唱え