第一回「東ティモールコーヒー」 文:椎名 勲

写真  私は最近まである会社の顧問をしていた。
 できると評判の若手営業マンと一緒に、都庁へパスポートの申請に行ったときのことだ。
帰りがけに私「寒いね。温かいコーヒーでものんでから帰ろう」、「顧問。ボクたちが日頃どんな所でコーヒーをのんでいるか、ご存知ですか?」、「喫茶店じゃないの?」、「最近、いいところを見つけたんです」
 午後4時。都庁裏のNSビル1階「すき家」、ちょうどお客の少ない時間帯だった。
 予想以上にきれいな、広いファミリーレストラン風。テーブルが適度に離れていて、禁煙席が透明ガラスで仕切られているのもいい。
 食後のコーヒーをのむカップルや、コーヒーだけのビジネスマンもいた。
 コーヒーカップを持ってテーブルへ。彼「これは東ティモールのコーヒーと聞いています。営業のボクたちには、コーヒーの香りと苦味が外回りの疲れを癒し、元気をくれるんです。ふだん飲んでいるのはこういうコーヒーですが、お口に合うでしょうか?」
  私「東ティモールはポルトガルの旧植民地で、その後インドネシアに編入されていた。 私がまだ現役で、インドネシアに毎年出張していた頃はずいぶん武力衝突があったけれど、2002年に独立した。ポルトガル人が持ち込んだブラジル・ティピカ種のコーヒー栽培以外には、産業が殆どない」、「さすが詳しいですねェ!」
  私は心を静め、ゆっくりとコーヒーを味わった。「思ったより酸味がキレイ。深煎りだから苦みが出ているが、その分雑味が抑えられている」私が言うと、彼は頷きながら先を促すように目を輝かせて聞いていた。私(こいつ、聞き上手だな)
  私は続けた。「コーヒー豆の持つ本来の味は、酸味と渋みと仄かな甘味だけど、焙煎すると苦みが出てくる。深煎りすると苦みが強く出て、その分渋みや雑味が薄くなる。浅煎りでは苦みが弱く、酸味が立ち、渋みや雑味も残る。だから、焙煎はコーヒー技術者の腕の見せどころ。料理人が味見をするように、いい職人は機械任せにせず、必ず焙煎途中で何度か豆を齧って、煎り具合を確かめる」、「キレイな酸味とは、どういうものですか?」、「食べて飲んでサラリと、喉にひっかからない酸味。例えば、ミカンのように美味しく感じる酸味をいう」、「顧問の説明を聞いたら、今までと味わいが違ってきました」
・・・私「サア、そろそろ会社に戻ろうか」、「ハイ」
  彼はスッとした姿勢で、残りのコーヒーを飲みほした。私がコートを着ている間に、彼は黙って手早くカップや紙くずをまとめ、サッと片付けてきた。
私(フム、できる奴は違う!)

椎名勲プロフィール

日本児童文芸家協会会員(児童小説・脚本・エッセイなど)。化学会社役員・顧問を経て、現在株式会社キッズ(映像制作会社)顧問。“食のエッセイスト”として地下鉄情報誌メトロガイドに「いい店見つけた」を長期連載中。著書「マイ・ベスト・デイズーぼくらの最後の試合―」(シティライフ社・映画「ベースボールキッズ」原作)、「いい店見つけたー料理は作った人の味がするー」(日刊工業新聞社)、映画「少女戦士伝シオン」脚本など。

すき家の日常

悩める就活生編 & 職場の先輩・後輩編

新宿にあるNSビルの一角には、ビジネスパーソンや就職活動中の大学生などがふらりと息抜きに訪れる場所があります。ゆったりとした空間で、おいしいコーヒーが飲めると評判のお店です。
ふと、どんな会話をしながら時間を過ごしているのか気になって、ある日の会話を切り取ってみました。

※コーヒーはお取り扱いのない店舗もございます。

※アイスコーヒーはルワンダ産の豆を使用しています。

知られざる東ティモールコーヒーの魅力

写真コーヒー栽培の歴史は意外と古く、大航海時代までさかのぼります。
ポルトガルが白檀を求めてティモール島に来航したのは1511年のことです。それから約300年後の1815年、当時のポルトガル総督が最初にコーヒーの苗を持ち込んだとされています。

東ティモール民主共和国(以下、東ティモール)は南回帰線と北回帰線に挟まれた、コーヒーベルトと呼ばれるコーヒー栽培に適した位置にあります。そのため、非常に良質な豆が採れました。

しかし、東ティモールコーヒーと聞いてもピンと来ないかもしれません。
コーヒーにあまり詳しくないという方でも、マンデリンならご存知の方も多いのではないしょうか。少し乾いた木のような独特の香りのあるコーヒーです。実は東ティモールで採れるコーヒーのほとんどが、マンデリン独特の香り付け加工をされ、出荷されていたのです。ベースとなる味が良いのに、ブランド力がないために、このようなことが起こっていたのです。

東ティモールコーヒー本来の味は、ブルーマウンテンに似ています。ブルーマウンテンは、コーヒーのなかでも一番バランスが良いとされ、柔らかい酸味とすっきりした味わいが特長ですが、反面、コクがあまりありません。
対して東ティモールはバランスが良いだけではなく、香りも良く、コクがあるわりに後味はクリーンですっきりとしています。

味覚は、嫌な味は横にひろがって口全体に残り、良い味は縦にすっと入るといわれています。
よくカフェなどで「熱いうちにお召し上がり下さい」と言われますが、これは冷めると雑味が出てくる、ということの裏返しでもあります。
良いコーヒーは、もともと雑味がないので熱いときこそ柔らかく繊細で、ともすると味がないようにさえ感じてしまいます。温度が低くなるにつれ、本来もつコーヒーの良さが引き立ってくるのです。

東ティモールコーヒーと味の対局にあるのがキリマンジャロです。
食文化との関係からいっても、酸味があり、キレのあるキリマンジャロは日本食とも相性が良く、人気があります。
ビールで例えると、キリマンジャロをドライビールとするなら、東ティモールはしっかりと存在感のあるクラフトビールといったところでしょうか。

まだまだ希少価値の高い東ティモールコーヒー。そのコーヒーを気軽に飲めるのが「すき家」です。ビジネスの合間に、あるいは食後に、温度とともに変化する味を楽しみながら、飲んでみてはいかがでしょう。

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