前回（Vol.3）は、モバイル・シンクライアントを活用して、低コスト･高セキュリティのモバイル環境を作る方法を紹介した。モバイル・シンクライアントはデータの記憶領域を持たないため、情報漏えいのリスクなしに、「いつでもどこでもセキュアに仕事ができる環境」を作ることができる。とはいうものの、重要なデータが入っている端末を、すぐにモバイル・シンクライアントに移行できないというユーザも少なくないだろう。

　そんなユーザにお勧めしたいのが、マルチ機能付きモバイルデータ通信カード、NLG（Nonstop Laptop Guardian）の活用である。

　これは、1枚のデータ通信カードにモバイルPC用のセキュリティ対策を丸ごと凝縮した国内初のまったく新しいソリューション。この1枚を既存のPCに挿し込むだけで、モバイルPCの紛失・盗難、インターネットからの不正アクセスなどによる情報漏えいのリスクを軽減することができる。

　このカードについて、IIJソリューションサービス部 ソリューションサービス開発課 宮本外英氏は次のように解説する。

　「このカードの最大の特長は、データ通信カード自体が『バッテリー』、『メモリ』、『CPU』、『OS』、『GPS機能』、『セキュリティ対策に必要なソフトウェア』を内蔵し、ノートPCの電源がOFFになっている場合でも、完全に独立して動作すること。これにより、システム管理者は、離れた場所からノートPCをいつでも監視することが可能です。また万一、紛失したり盗難にあった場合にも、GPSによって位置確認ができるうえ、『遠隔データ消去機能』を使えば、ディスク内にあるデータを消去できるため、情報漏えいを防ぐことが可能です。もちろんPC内のデータは常にサーバにバックアップされているので安心です」

　それ以外にも、このカードを挿し込まないと、PCを起動できないように設定できたり、ファイアウォール機能やデータ暗号化機能が搭載されているなど、情報漏えいやインターネット上での脅威からモバイルPCを守るための工夫が随所に施されている。

　「セキュリティだけでなく、利便性にも配慮しています。モバイルからVPN（※1）VPN：Virtual Private Networkの略。企業内LANを通信キャリアの持つバックボーンネットワークを通じて相互に接続するサービス。これまで各拠点の間に専用線を導入して直接通信していたものを、キャリアのバックボーンに「相乗り」することにより低コストで拠点間接続が可能となる。に接続する際、通常は接続のための作業が何回か発生しますが、このカードなら、自動的に接続処理を行ってくれます。『気がついたら社内LANに入っていた』という感じで、VPNも大変簡単に使えるようになります」（宮本氏）

　メリットはこれだけではない。多くの機能を1枚に集約しているため、必然的にコスト効果も高い。

　「通常、モバイルPCにいろいろな機能を追加したいときは、複数のソフトウェアをインストールしたり、さまざまなカードを機能ごとに挿入したりする必要があります。しかし、NLGならたった1枚ですべての機能を実現することができる。ユーザの利便性を向上させるだけでなく、従来モバイルPCにかかっていたハードウェアコストやライセンスコスト、管理コストを大幅にカットすることができるのです」と同・営業本部 マーケティング企画開発部 課長 三木庸彰氏は説明する。

　このように、既存のモバイルPCをより手軽にセキュリティ強化したいなら、NLGは非常に有効な手段となる。既存のIT資産をそのまま使えるので、すぐにでも高いセキュリティを実現できる点が最大のメリットといえるだろう。

　前回紹介したモバイル・シンクライアントと組み合わせれば、さまざまな選択肢が生まれる。例えば、比較的標準的なアプリケーションを使うことの多い営業や管理部門ではモバイル・シンクライアントを一斉導入し、さまざまな独自のアプリケーションが稼働している開発部門などではNLGを利用するという具合に、状況に応じて使い分けるのもひとつの手だ。また、まずはNLGを活用し、その後モバイル・シンクライアントに徐々に切り替えていくということもできるだろう。

　さて、本連載では、4回にわたってモバイル活用のメリットとそのためのセキュリティ対策について紹介してきた。現在のような不況下では、コストを抑制しつつも、人・モノ・カネ・情報といったリソースを最大限に活かすことが、これまで以上に求められる。モバイルは、こうした経営や新たなビジネス展開を図るために、欠かせないツールとなるだろう。