――日本の医療環境について言えば、超高齢化の進展が深刻な問題をもたらしそうです。
湊 財政的には負担が大きくなるのは避けられませんし、創設から50年を経過した国民皆保険制度を堅持していくためにも現状に合わせたチューニングが必要になるでしょう。根本的には、少子化を解消し「支える側」「支えられる側」のバランスをとっていかなければなりませんが、そうした政策が実を結ぶまで、私たち現役世代にできることは「時間を稼ぐ」ことです。
今の現役世代が、できるだけ長く健康を保ち、支えられる側に回らないで済むように、そして「医療費を適正化」していくために、IMSが長年、蓄積してきた情報やノウハウで地図を描き、貢献していきたいと考えています。
――具体的にどのようなサービスを提供するのでしょうか?
湊 「重症化の予防」「健康生活の維持」は今後の大きなテーマです。
医療費の適正化といっても、ドクターに診てもらわないことが正しい選択ではありません。軽症のうちに受診して、処方された薬を正しく服用すれば、病気の進行を遅らせたり、健康を取り戻すことができます。重症化すれば、手術や入院など様々なケアが必要になって総コストが高くなります。「いかに重症化を防止するか」ということに、私たちの持つデータや分析力を役立てていきたい。
海外では、医療機関の協力も得て、処方箋データ、電子カルテ情報の収集にも力を入れています。新薬を市場投入する際の治験の最適化・迅速化や、治療技術の向上に役立つこれらデータに対する分析・利用技術も数多く開発しています。日本は、欧米各国とはデータ環境が異なるため、順次可能な分野から取り組みを進めています。このようなより患者に近い情報を取り扱うためには、情報そのものを匿名化=非個人情報化することが前提条件です。IMSではグローバルなレベルで永年にわたってこの匿名化技術に投資し、個人情報保護に万全を期しています。
IMSは製薬企業や医療現場を効率化し経済的なメリットを得てもらうことを生業としていますが、ヘルスケアに携わる企業として、患者さんの痛みや苦しみを少しでも軽くすること、患者予備軍の方ができるだけ長く健康な状態を保てるようダイレクトに貢献することも常に意識しています。