読者の皆さんは、小松帯刀をご存じであろうか。小松と言えば、大河ドラマ『篤姫』(2008年)によって初めてクローズアップされた人物ではなかろうか。しかし、実像とはかけ離れた描写による、優柔不断な平和主義者的なイメージが定着した感が否めない。また、『西郷どん』(2018年)で再浮上したものの、消化不良な描かれ方に終始したと感じている。 小松について、これまでどのような文献類が存在したのだろうか。瀬野冨吉『幻の宰相 小松帯刀伝』(改訂復刻版、宮帯出版社、2008年)、高村直助『小松帯刀(人物叢書)』(吉川弘文館、2012年)をあげることが出来る。つまり、意外と最近の相次ぐ刊行によって、実像への接近が