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テクノロジー
2017.11.09

「AI後進国」日本、その原因は行政?企業?国民性?
AIや自動運転の分野で日本が大きく遅れている理由を識者に聞いた

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日本が「先進国」と呼ばれて久しい。しかし最近ではさまざまな面で“遅れ”が生じているといわれる。特に指摘されるのが、AIの技術研究や普及、自動運転技術だ。日本が置かれている状況について、各分野の有識者に話を聞いた。

“研究”への無理解がAI技術の遅れを招く

テクノロジー面の遅れの中でも、筆頭に挙げられるのが「AI(人工知能)」の技術力と普及の遅れだ。人工知能研究の第一人者、東京大学特任教授の中島秀之氏は、技術開発の遅れている原因のひとつに、日本企業が保有する“データ量”の問題を挙げている。

「現在のAIは、ディープラーニングと呼ばれる機械学習技術の進化によって、画像や音声の認識率が格段に上がっています。そのとき、AIに学習させるためには大量のデータが必要不可欠なのですが、日本の企業は膨大なデータを収集できるビジネスモデルがなく、学習させるデータも持っていません」

米国ではGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれる4大IT企業が先頭に立ち、各社のサービスを利用している各ユーザーがスマホやパソコンなどから入力したテキストデータや音声、映像といった自社が持つデジタルデータをAI開発に役立てている。しかし、日本にはそうしたデータを収集するシステムやビジネスモデルがないため、ディープラーニングを行なうことができない。これが“遅れ”の端的な原因と言えそうだ。

しかし、AI開発が遅れる理由はそれだけにとどまらない。中島氏によれば、政府が用意する「研究予算の少なさ」が関係しているという。

「私は、AIを『人工的につくられた知能を持つ実態。あるいはそれをつくろうとすることで、知能そのものを研究する分野』として定義しています。そのため、研究に重きを置く必要があると考えているのですが、日本のAIに関する研究予算は欧米に比べて2桁ほど少ないのです」

AIを含む情報技術開発の研究予算の少なさは、そのまま研究開発の遅れを招いているという。

「研究予算の少なさは、行政側、とくに財務省は、テーマの重複を嫌い、切り分けようとします。また、失敗を嫌って短期的成果を求めます。これは“研究”という行為の本質が分かっている人がいないことの表れです。失敗をせずに必ず成功をさせようと思っていたら、大きな研究はできません」

このように指摘する中島氏。また、政府のバックアップ不足はもとより、AIという存在が一般的に普及していない理由には日本人の国民性も深く関わっている、と続ける。

「例えば、現在のようなAIブームが来ていたとしても、関連する技術研究はすぐに反応することができません。しかし、日本人が持つ“熱しやすく冷めやすい”という国民性によって、研究の成果を待つことなく世間の興味が薄れ、予算や人員も削減されてしまいます。これでは、次のブームに対応できません。ブームが来てから研究をはじめても遅いのです。本来、研究はブームの先をいく必要があります」


日本企業、行政、国民性……それぞれが日本のAIの発展を阻んでいるようだ。まずは、地道な研究なくしては技術の進歩が望めないことを、私たちは理解する必要がありそうだ。

完全自動運転化、2025年の目標では遅すぎる!?

世界的に品質の高さが認められている、日本の自動車産業。しかし、こと自動運転に関しては技術面での遅れも指摘されているが、果たして?

「日本における自動運転の技術力が遅れているというよりも、欧米勢、とくにドイツ勢がリードしているという表現が適切かと思います。ドイツ勢は、技術開発面だけでなく、政策面においても世界的に一歩リードしているんです」

そう語るのは、名古屋大学客員教授・佐藤登氏。

「日本政府が、完全自動運転の実現目標に設定したのは2025年。しかし、独フォルクスワーゲンとBMW、そして米フォードは2021年までに完全自動運転を実用化することを表明しました。日本は目標設定の時点で、他国から遅れをとっていたと考えられます」

さらに、独アウディは自動運転実用化のプレ段階として、高速道路内で時速60km以下で走行するという条件つきで、緊急時を除き、システムに運転を委ねるレベル3の「A8」の発売を報じた。彼らのフットワークの軽さは、行政と自動車産業が積極的に連携していることを物語っている。

「車の電動化の分野では完全に日本勢がリードしてきたこともあり、その分、自動運転を牽引するのはドイツである、という気概を感じます。ドイツの持つ“これまで自動車文化を築いてきたというプライド”こそ、彼らが自動運転分野の先頭を走る原動力になっているようです」

ドイツが自動運転分野に尽力する理由は、歴史的な事情も含まれる。ドイツでは、速度無制限の高速道路「アウトバーン」の建設が1933年からはじまり、それと連動して、安全技術を核とした自動車技術の開発も進められていたという。

「ドイツの高速道路の走行速度は原則無制限。そのため、走行安全と衝突安全性の技術開発はもっとも重視されてきました。そして、走行安全は自動運転においても重要な技術。ドイツが長年培ってきた技術を自動運転分野に活かしているのです。その分だけ、相対的に日本勢が遅れる現状を引き起こしていると言えます」

これ以上日本が世界に置いていかれないために

自動運転技術において前を走るドイツから、これ以上引き離されないためにはどのような対策が必要だろうか?

「政府と産業界が積極的に連携しているドイツの構図を見習い、追従することが先決。そして政策面と自動車業界が手を組み、統一的目標設定を前倒しして、2020年頃の実現に変更する必要があります」

また、自動運転技術の導入にはビッグデータやAI(人工知能)の活用など、これまで自動車業界が経験してこなかった視点での開発が求められる。そのため、こうしたテクノロジーを扱う企業や研究機関との連携も必須となる。これまでのように、自社単独で車を丸ごと作るのは難しくなるという。

「事実、世界の自動車業界は以下に示す図にあるように、アライアンスは業界を超えてどんどん複雑化しています。自動車メーカー各社が前に進むには、他分野との連携を基本にして、いかにして力強さを発揮するかにかかっています」

業界を超える自動運転に関するアライアンス例(佐藤氏監修のもと編集部作成)

業界を超えて連携するメーカー各社。そこには、先端的な技術開発を行なう米NASAや米マイクロソフトなどが名を連ねている。

そして、今後国を挙げて完全自動運転化の実現に向かうために、避けては通れないのが“技術開発による知財権確保”と“国際標準に向けた主導権構築”の領域だ。

「この2つのうち、国際標準化やルール作りに対して日本は積極性に乏しく、国内での自動運転の実用化の遅れを招いているのです。何よりもまず、自動運転標準化への対応を加速させる必要があります。事故発生時の責任の所在についても、活発に議論が進んでいるようには見えません。これらの課題に、スピーディーに取り組まなければ、世界の動きからさらに取り残されるリスクが生じます。

特に企業側は、責任の所在がビジネスリスクになることを足踏みするよりも、今のタイミングを“チャンス”と捉え、新たなビジネスモデルを考える必要があるのではないでしょうか」

目先のリスクを恐れてチャンスを逃した未来に待っているのは、世界から取り残される日本の姿。これは自動運転技術に限らず、さまざまな分野に言えることなのかもしれない。

AIと自動運転技術。それぞれ理由こそ違えど、根底には“行政と現場の乖離”と”国民性“の問題など、共通点が伺える。お世辞にも日本が先を行っているとはいえない。しかし、折しも今、世界は新たなテクノロジーによって訪れる第4次産業革命の最中。世界中が日進月歩の勢いなのだ。目まぐるしく変化する情勢に対応できるか否かで、日本の未来が大きく変わる分岐点に差し掛かっている。


●佐藤登オフィシャルサイト
 http://drsato.biz

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