アップル決済を回避するリーダーアプリ

 アップルは開発者がデジタルサービスやサブスクリプション(継続課金)サービスを「iPhone」や「iPad」向けアプリ内で販売する際にアップルの決済システムを使うように義務付けている。同社の決済システムでは販売額の15~30%に相当する手数料を徴収する。

 これを嫌う一部のアプリ開発者は、アプリ内でサブスクやコンテンツを購入できないようにしている。例えば音楽配信のスポティファイ・テクノロジー(スウェーデン)のアプリでは有料プランへの切り替えができない。有料版に移行するにはスポティファイのウェブサイトで手続きする必要がある。

 米アマゾン・ドット・コムは、iPhone向け電子書籍アプリで電子書籍を販売していない。電子書籍を購入するためにはアマゾンのウェブサイトを訪れる必要がある。

 この仕組みが利用者を混乱させていると指摘されている。アップルは21年9月、こうした実情を踏まえ「利用者が自身のアカウントを設定、管理できるようにアプリ内に外部リンクを設けることで公取委と合意した」と説明していた。

ゲームアプリ大手がアップル提訴

 アップルは批判をかわすために一定の譲歩を示してきた。21年8月には、アプリ開発者らが起こしていた集団訴訟で和解した。開発者がアカウント登録を通じて入手した利用者の電子メールアドレス宛てにメッセージを送り、他の決済方法を案内することを容認した。21年1月にはApp Storeで得た年間収益が計100万ドル(1億2000万円)以下の開発者を対象に決済手数料を30%から15%に下げた。

 だが、アップル譲歩の恩恵を受けにくいゲームアプリ大手の米エピックゲームズなどは、同社を批判している。エピックゲームズは決済手数料が法外だとして20年8月にアップルを提訴。エピックゲームズは米グーグルも提訴した。

 米カリフォルニア州の連邦地裁は21年9月の判決で「アプリ開発者が利用者をアプリ外の決済システムに誘導すること」をアップルが禁止している行為はカリフォルニア州の不当競争法(UCL)に違反するとし、外部リンクの設置容認を命じた。

 だが21年12月、米連邦控訴裁判所(高裁)はアップルが求めていたアプリ決済ルール見直し命令の一時停止請求を認める判断を下した。この法廷闘争は長期化するもよう。アップルは今後数年間、App Storeに大きな変更を加えることなく、従来通り事業を運営できるとみられている。

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