「HR Tech」で人事の仕事が変わる?

FinTech」に代表されるように、さまざまな分野とテクノロジーを掛け合わせる「X-Tech(クロステック)」が注目を集めている。

 今回取り上げる「HR Tech」もその一つ。「HR(Human Resource)」とテクノロジーを掛け合わせた造語だ。人事分野にAIやビッグデータを用いることで何が変わるのだろうか?日本ならではの需要と併せて、市場の動向を見ていこう。

労働力不足の日本。人材活用は企業の死活問題に

 2018年2月5日にミック経済研究所が発表した「HRTech クラウド市場の実態と展望 2017 年度版」によれば、クラウドをベースにした人事関連ソリューションである「HRTech クラウド」の市場規模は、2016年度で109.7億円。2017年度には前年比142.8%の156.6億円と成長期を迎え、大きく飛躍した。さらに2018年度は前年比143.9%の225.4億円、2022年度には2016年度の6倍となる663億円の市場規模へと成長すると予測されている。

 また、2018年10月1日に発表された日本中小企業情報化支援協議会(JASISA)が作成している「HR Tech業界カオスマップ」の最新版に掲載されているサービスの総数は299。前回の版(2018年5月7日更新)での掲載総数は231サービスだったため、半年足らずで68サービスも増えていることになる。

 盛り上がりの一因は、労働力不足が表面化しつつある状況にあるだろう。最近では外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正案が話題になったが、そうしたことからも分かるように、日本の少子高齢化に伴う労働力不足は年々深刻さを増している。また、働き方改革が叫ばれ、これまで以上に「労働」に対して世の中の関心が高まっている。

 こうした中、採用や育成、人事評価や勤怠管理などにテクノロジーを導入することで、限られた人数でより組織全体の生産性を高めることができると期待されているのだ。

 具体的には、どういった方向性のサービスが存在するのだろうか。例えば、前述のカオスマップでは各サービスを以下の8カテゴリーで分類している。

・求人
・アウトソーシング
・採用
・タレントマネジメント
・労務管理
・アルムナイ
・HCM(全体)
・その他

 給与計算や勤怠管理といった事務的な業務の自動化から採用面接、人事配置に至るまで、幅広い領域をカバーしていることが分かる。

 なお、このうち「HR Tech業界カオスマップ」最新版で、前回から最も増加数が多かったのは「タレントマネジメント」カテゴリーとのことで、27サービスが追加されている。また、先に挙げたミック経済研究所の調査でも「人事・配置クラウド」が市場で占める割合が最も大きい(次点は『採用管理クラウド』)点について、「中堅・中小は人材の可視化・分析、大手はタレマネ需要が牽引」と分析されている。