キャッシュレス化などで話題の「FinTech」は、社会をどう変える?

 Finance(金融)とTechnology(技術)を掛け合わせて生まれた造語、「FinTech(フィンテック)」。仮想通貨はもちろん、家計簿アプリやQRコード決済、ロボアドバイザーによるAI投資など、そのサービスはずいぶんと身近なものになってきた。

 つい最近も、ソフトバンクとヤフーが共同経営する「PayPay」が大規模なキャンペーンを行ったことが話題を呼び、同社のスマホ決済サービスに多くの注目が集まった。

 テクノロジーとの相性が良いとされ、起業家や投資家たちからも人気の金融分野。現在のトレンドや盛り上がりの背景を分析していこう。

銀行とITベンダーが進める金融業界のトランスフォーメーション

 矢野経済研究所が7月4日に発表した国内FinTech市場についての調査結果※によると、2017年度の国内FinTech市場規模は前年度比12.5%増の1兆184億円。2021年度には1兆8590億円まで拡大すると予測されている。

 これだけの市場規模だ。当然、スタートアップだけでなく、大手ITベンダーやメガバンクも積極的にFinTechサービスの実用化や普及に向けた取り組みを行っている。

 例えば、みずほ銀行は口座情報の照会や決済サービスなど、銀行との連携を求める外部の企業に対し、安全性を確保しながらシステムを持続させるためにIBMの「FinTech共通API」や「IBM API Connect」、「IBM DataPower Gateway」を活用している。また、3月には日本IBMのテクノロジーを活用した将来の価格推移や変化を予測する新たな市場予兆管理ツールを共同開発したことを発表した。

 また、日本IBMは複数の地方銀行と共に、地方銀行向けに特化したシステムの開発・保守、運用・管理などを行う「地銀ソリューション・サービス」という子会社や、地方銀行6行との出資により、FinTechに関する調査・研究やFinTechを活用した新たな金融サービスの企画・開発等を専門的に行う「T&Iイノベーションセンター」を設立している。

 1994年にマイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏が「将来、今の形の銀行は必要なくなる」と唱えたことは有名だが、その予言通りに銀行は大きく変わろうとしているのだ。

※矢野経済研究所「国内FinTech(フィンテック)市場に関する調査を実施(2018年)」
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/1922

 前出の矢野経済研究所による発表では、市場活況の要因として下記のように法律的・技術的・物理的環境の整備が進んだ点を挙げている。

 法的な環境整備については、銀行法の改正に伴い、全金融機関が2018年3月までに「電子決済等代行業者との連携及び協働に係る方針」を打ち出したことや、政府がAIやブロックチェーン事業などを対象にプロジェクト型の「規制のサンドボックス」を創設したことで、大規模な実証実験を進める環境が整いつつあること。

 また、技術的な環境については、API(Application Programming Interface)の公開方針が打ち出されたことにより、各金融機関がそれに即した体制を整えていること。

 さらに物理的な環境として、大手町の「FINOLAB」や兜町の「FinGATE」など、都内にあるFinTech産業拠点のリニューアルオープンや新規オープンが相次いだ点が挙げられている。各施設ではミートアップ(私的な会合形式のビジネスマッチング)を積極的に開催しているほか、海外のFinTech 拠点とのパートナーシップ締結を進めており、FinTech系ベンチャー企業のグローバル進出を後押しするなど存在感を高めている。

 そして、インバウンド対応が求められる2020年の東京オリンピックを前に、キャッシュレス化への対応が迫られていることも、国内市場を活気づける要因の一つに挙げられるだろう。