日本では昨今、欧米から輸入されたIoTという言葉を旗印に、「どんな新しいビジネスモデルが成立するのか?」「どう儲けるのか?」「経営はどう変わらなければならないのか?」という議論が活発にかわされている。
そこで、「IoT」「Industrie4.0」などの発信源である欧米、特に筆者が滞在していたドイツでは何が起こっているのかを、「どう変わり、何を守るのか」という切り口で簡単に紹介したいと思う。
変革その1:自らの変革、ヒトの変革に挑む
IoTの議論で陥りがちなのが、自分たちのマインドセット、価値観、働き方を変えることから目を背け、テクノロジーを使ってお金儲けをしようという安易な発想である。
ドイツでは、Industrie4.0というキーワードもさることながら、ここ1年ほどで「digitalisierung=デジタル化」という言葉が頻繁に使われる様になった。この言葉は、繋がることに焦点を当てたIoTや、工場やサプライチェーンといったイメージが強く根付いてしまったIndustrie4.0よりも広いコンセプトの言葉で、顧客価値を実現するあらゆるプロセス、働き方、資産をデジタル化しようという意味が込められている。この言葉からは、IoTによるサービス事業の拡大だけでなく、社内のプロセス、ヒトも変わらなければならないというIoTに対する姿勢が伺える。
近年、あるドイツの大企業は、デジタル化時代に対応するためのチェンジマネジメントのプロジェクトに取り組んでいたという。そこでの重要なテーマは、デジタルな会社とは何か、組織はどうあるべきか、経営者や従業員がどう働いていけばいいか、どう評価されるべきか、といった自社の変化の方向性を改めて見極め、導入することであった。
本件は、IoTを活用した新規のビジネスモデルや、そのPoC(Proof Of Concept)があらかた終了した上での話であり、これからIoTで新規のビジネスを探そうという企業にはやや先のことのように思えるかもしれない。だが、IoTも社内の人材がついてこなければビジネスは回らない。いま一度、“Are we ready for IoT / digitalization?” と自らに問いかけてみてはいかがだろうか。