

厳罰化する方向にある一方、贈収賄対策の研修などをしっかり行っている企業に対しては、罰則が軽減されるケースもあるようですね。
コンプライアンス研修が整備されている企業は、仮に賄賂が発覚しても、賄賂を渡した個人は処罰されても、法人は罪に問われないケースも出てきています。そこで欧米企業は積極的に不正防止のためのコンプライアンスプログラムに取り組んでいます。
日本企業の状況はいかがですか?
日本企業は贈収賄対策が不十分のところも多く、事業上の大きなリスク要因になりかねません。日本企業には3つの脆弱性があると考えています。
1つ目は、組織体制の問題。例えばグローバル企業では贈収賄などの不正防止のためにコンプライアンスオフィサーが約600人いる企業もありますが、日本企業では数名程度しかいないところが多いのが現状です。発覚した時の甚大なダメージを考えると、もっとより多く人的資源を配置する必要があります。
2つ目は規則の未整備。贈収賄専用の社内規則がない企業がほとんどではないでしょうか。また贈収賄についての規則があっても1~2項目しかないという企業も多いと思います。明確な規則づくりから始める必要があります。
3つ目は社内研修の不足。例えば独禁法に対する社内研修はしっかりしているものの、汚職防止に対する研修について力を入れている企業はまだまだ少ないと言えます。結果、贈収賄に対する社員の意識が低く、問題の重大性に気づかず、安易に賄賂を支払ってしまうことになりかねません。未然に危機を回避するためにも実効性のある対策として、贈収賄防止の研修を導入した方が賢明でしょう。
社内リソースが限られており、全社員に贈収賄防止の研修をするのが難しい場合、どうしたらよいのでしょうか。
贈収賄リスクに巻き込まれやすい部署や地域に絞って、研修をしていくのが望ましいと思います。
なるほど。リスクウエイトで優先順位をつけて導入していけばよいのですね。
特に進出先の現地社員には徹底しておく必要があります。また不正防止のためには、企業のトップ自らが断固として賄賂は支払わないというメッセージを発信することが重要です。その上で汚職に巻き込まれやすい中間管理職などへの研修を強化するとより効果が上がるでしょう。


贈収賄はどのようなルートで発覚することが多いのでしょうか。
様々なルートがあります。国税局の調査、独禁法での調査、M&A前のデューデリジェンスなど。ただ中でも多いのは従業員による内部通報です。内部通報制度を社内できちんと整備していれば、早期の段階で調査ができ、問題が深刻になる前に食い止められる可能性も出てきます。外部に通報される前に社内できちんと処分するなり、対応しておくことが重要になるでしょう。
海外進出する際、贈収賄リスクを避ける方法はあるのでしょうか。
日本企業が進出したいと考える国ほど贈収賄リスクが高い傾向にあります。リスクを避けることは難しいですが、リスクがあることを前提にきちんと対策をしておくことが大切です。
以前から海外進出の際の贈収賄リスクがありましたが、今までは社会の問題として表面化されなかっただけだと思います。しかし今では世界的に不正防止強化の方向にあり、事件が表面化するケースが増えてきました。
もし発覚した場合、企業が受けるダメージは計り知れません。リスクがあるから進出しないのではなく、リスクに備えて万全の対策をしておくことが、今、日本企業に求められていることではないでしょうか。
