ITに消極的な企業の場合、サーバやPC、ストレージなどのハードウェアを、文字どおり物理的に壊れるまで使い続ける傾向がある。「ちゃんと動いているのだから、そのまま使い続けられる」といった具合だ。近年のハードウェア製品は価格の割に総じて頑丈かつ高性能であることもこの傾向に拍車をかけている。
中堅・中小企業でよく見受けるのは、部門のファイルサーバなどの用途で手頃なPCサーバを購入し、部門のオフィスの片隅に置かれていつのまにか相当の年数が経過しているようなケースだ。そのようなサーバにも形式上、部員の誰かが管理担当者になっているが、たいていは「サーバは基本、稼働させっぱなし」という程度の認識から、OSも購入時のプレインストールのままといった状態で放置される。
こうした管理の下、適正なライフサイクルを超過し老朽化が進むと、冷却ファンの故障など、ハードウェアトラブルを起こしやすくなり、不慮のシステムダウンなどで、重要な業務ファイルを突然失うような事態も発生する。ここ数年でサーバのフォームファクタ(規格)やメンテナンス性は大きな進化を遂げており、消費電力や設置スペースの面、定常的な運用管理にかかるコストなどさまざまな面で、旧型の製品を使い続けるほうが家電製品と同様、単純に「損をする」ケースが多いことは見逃されがちだ。
加えて、サーバ内のソフトウェアの放置も危険をはらんでいる。古いOSやアプリケーションをベンダーのサポート期間が切れるまで長く使い続けていると、いつのまにか セキュリティホールだらけといった状態と化す。添付メールにウイルスを仕込んだサーバ攻撃や遠隔からの不正操作など、ここ数年でいっそう狡猾・凶悪化したクラッキングの標的にされ、データベースに入っていた顧客の個人情報を漏洩させてしまい、企業経営を揺るがすほどの損失を被るといった事例は枚挙にいとまがない。