米国のIT業界をよく知る人々にとって、シスコはひとつの型にはめにくい、ユニークな企業だといえる。
一般に米国のIT企業は、拠点が東海岸にあるか西海岸にあるかで、文化も服装も大きく異なっている。IBMのように東海岸を拠点とする企業はエスタブリッシュメントの色が強く、服装もボタンダウンシャツにスーツ姿が定番。それに対して西海岸のIT企業の多くは、より自由な雰囲気を持ち、ポロシャツやジーンズといったラフなスタイルが定着している。

それではシスコはどうなのか。西海岸を代表する企業のひとつでありながら、エグゼクティブのほとんどがスーツ姿なのだ。「これは会長であるジョン・チェンバースの嗜好でもあるのでしょうが、いつでも顧客やパートナーと会えるように、常にスーツを着用しています」と、平井社長はシスコの服装について説明する。
しかし服装の話は、同社の特異性を示すエピソードのひとつに過ぎない。企業経営の面でも「ベンチャー的な活力」と「伝統的な大企業の経営管理手法」を、独自の方法で融合しているのだ。今回の日本経営品質賞受賞の根幹は、ここにあるといっても過言ではない。
それでは具体的に、シスコはどのような企業経営を行っているのだろうか。大きく4つの側面から見ていくべきだろう。まず第1は組織マネジメント、第2はカルチャー、第3は経営執行管理プロセス、第4はテクノロジーだ。
シスコはこの4つ領域で、他社のベンチマークになりうる仕組みを確立している。そしてこれらが相乗効果をもたらす、顧客価値創造のサイクルを作り出しているのである。
