通信販売の売上高は年々増加し、昨年度は推計4兆1400億円と過去最高を更新した。パソコンの普及によって国内大手ショッピングサイトの認知も高まり、インターネット通販の売り上げも好調だ。その背景には、巣ごもり消費の増加とそれらを支える全国配送網の発達や、支払い方法の多様化がある。中でも佐川急便の代金引換サービス「e-コレクト」は、消費者の情報漏洩に対する不安を解消することでカード利用者も増加。2008年度は取り扱い個数で前年比11.6%増と大きな伸びを見せた。ネット通販事業で成功したサンライズファーム(本社:千葉県香取市)の事例をもとに、企業の成長をサポートする佐川急便の多彩なサービスとソリューションを紹介しよう。
日本通信販売協会によると、2008年度の国内通信販売売上高(推計)は前年度比6.7%増の4兆1400億円となり、10年連続で過去最高を更新した。益々拡大する通販市場で、ファームネットジャパンが運営するハム・ソーセージの通信販売サイト「サンライズファーム」は楽天のショップオブザイヤーやヤフー・オークションのストアアワードなどを数々受賞した、人気の高い通販サイトである。最近も、テレビで取り上げられた「とんとろハム」には注文が殺到し、さらなるファンを増やしつつある。
ネット通販を始めた2000年に楽天の新人賞を受賞。「多い時には一日に約2000件もの注文があった」というから、ネット通販業界でも破竹の勢いで成長した会社と言える。素材を吟味した良質の商品を最良の状態で提供することで評判となり、リピーターが多いのも「サンライズファーム」の強み。しかし、「趣味が高じて養豚業から自家製ハムの製造を始めた」というファームネットジャパン代表取締役の髙木邦彦氏は、「卸の会社でスタートした当初は販売地域が限られ、認知度も低かったため、商品が売れずに苦しんでいました」と振り返る。
当時、朝市での販売、スーパーやデパートへの出品…県内を車で回っての営業活動など、様々な手を尽くしたものの、なかなか業績は上がらなかった。直営店の経験もなく、苦闘の最中に友人から勧められて始めたのが、インターネットを利用した通信販売だった。しかし、現在の一日に1000件以上という注文をスムーズにこなせるように成長するまでには、ビジネスモデルを確立するための様々な試行錯誤があった。
髙木氏の美味しいものへのこだわりから、現在取り扱っている商品は野菜や加工食品まで幅広く、300~500種にも上る。中でもハム・ソーセージはサイト出店当初からのメイン商品だ。「自家製」「顔の見える生産者」「吟味した素材」「美味しさ」、髙木氏が挙げるこれらの強みが人気商品となった原動力で、「平均で1年に2.2回の利用」というリピーターの多さもそれを物語っている。
「楽天市場に出店した2000年から、1カ月で500万円近く売れたんです。以前と比べものにならないほどの注文で、嬉しい反面、対応力が大きな問題になりました。1人のお客様が何個も注文されれば、その数の分だけ発注データを入力しなければならず、24時間データ入力をしたり、誤配送しないようにするなど、大変な気苦労もしました。ネット通販を始めたばかりの頃で、一度に集中した注文をさばけるようなシステムがなかったんです」と髙木氏は振り返る。
ターニングポイントは、旭市(千葉県)で農業を営む義弟から頼まれたとうもろこしを販売し、それが評判となったことだった。「弟が作ったとうもろこしは本当においしかった。でも『市場価格が安いため、手取りが少なくなってしまう』という。そこで、通販で一緒に売ってみようと考えたのです」。とうもろこしは採ってから時間が経つと熱を持つ。その熱によって素材の甘さが失われるので、スーパーなどで販売する頃には味が落ちてしまうのだ。そこで髙木氏は、朝採りのものを低温の状態で発送できないかと考え、その策が実り、月商1000万円に上った。
髙木氏はその成功にとどまらず、「ある一時期だけではなく、一年を通しておいしいとうもろこしを提供できないだろうか」と考えた。それは、南は九州から北は北海道まで各地域から出荷できれば可能になる。だが、どうやって新鮮で美味しさを保ったまま購入者の元に届けられるかが大きな課題となった。その問題をクリアするべくサポートしたのが、佐川急便だった。
佐川急便が提案したのは、ファームネットジャパンが提携した生産者が収穫したものを各地域のセールスドライバーが集荷し、そのまま購入者へ直接配送する仕組みだった。通常の通信販売会社は一旦自分のところに商品を集めてから購入者に配送している。だが、佐川急便が提案した飛脚クール便を利用するシステムにすれば、産地から直送されるので、鮮度も保て、味が落ちることもない。「おかげさまで、昨年はとうもろこしだけで3万件以上の注文がありました。そして、ありがたいことにクレームもゼロです」と満足気だ。
「以前にお願いしていた宅配便事業者には『難しい』と言われた要望を、佐川急便が熱意を持って相談にのってくれたから、実現できた」という集荷依頼システムの構築は、2005年に始まり、両社の共同作業で完成までに1年以上を費やした。それと並行して、増加を続ける注文数に対応できる出荷サポートシステム構築やデータベース化を進めた。顧客データの管理や発送に関わる様々な業務を簡便化する佐川急便の「e-飛伝Pro」をカスタマイズしたのである。
髙木氏は「たとえば梱包した箱に貼る送り状には、配達時間や『要冷蔵』などの表示も同時に印字できるので、それまでのように個別に必要な項目を何枚も貼らなくて済むようになりました。シールは1枚貼るだけなので、一日2000件以上をこなす年末のピーク時の出荷場の負担も、大幅に軽減されました」という。1年間で倍近くに上った注文個数に、人員を増やすことなく対応できたのは、その証左でもある。そしてさらに「これからも新たなサービスを提案されれば、いち早く導入していきたい」とする。
一方、サンライズファームが導入した「e-コレクト」もまた、ネット通販でも利用者が増加しており、手軽なネットショッピングには欠かせない要素となっている。購入者にとっては、現金やクレジットカード、デビットカードなど支払方法も選択でき、使いやすい。企業にとってもまた、カード情報の管理が不要で、確実に代金を回収できるという安心が得られる。Win-Winのサービスであるだけに、「e-コレクト」は今後、通販などでさらなる利用者を広める仕組みといえる。
「今後も一貫した製造・販売を強化していきます。『おいしいハムといえばサンライズファーム』と思い出していただけるようにしたい。今は自社ブランドのハムで原料から扱っているのは黒豚だけですが、今後さらに原料から自社化し、お客様が安心できる商品を増やしていきたいと考えています。また、お客様の約9割がコンシューマー向けなのですが、レストランからのオーダーでオリジナルのハムを作るなど、将来はB to Bのビジネスも拡大していきたい」と髙木氏は今後の展望を熱く語った。
地方にありながら全国へのビジネス展開を可能にするのが、ネット通販の大きな強みである。競争率の高い過酷な市場で消費者に選ばれるために、「産地のおいしさを保つ」ことに強くこだわり、そのために「飛脚クール便」や「e-飛伝Pro」を利用するシステムを構築したことが、ファームネットジャパンに飛躍と成功をもたらした。佐川急便 銚子店店長の一ツ柳貴之氏は「ファームネットジャパン様がさらなる進化、事業の拡大を遂げるために、今後もビジネスパートナーとして、ニーズに応じた多彩なサービスを提案し、提供していきたい」とする。
ネット通販に参入した当初のファームネットジャパンもそうだったが、顧客名簿の管理から受発注の手続き、代金回収までを一覧できるシステムを構築しようとすれば、膨大な時間とコストがかかる。そのカベを乗り越える援軍として期待されるのが、佐川急便の提案である。物流の効率化を含めて、業種業態に見合ったソリューションを提供し、ビジネスをトータルサポートする物流システムが盛り込まれているからだ。
多彩なサービスと提案力を活かし、ビジネスパートナーとして企業の拡大、成長を支援していく佐川急便の今後に期待したい。