筆者が、人から聞かれて答えに困る質問に「好きな城はどこですか?」というのがある。 城の面白さとは、一つ一つが他と違って個性的であることだと思っているので、どこかの城を他と比較して「A城の方がB城より面白い」とか「B城の方がC城より好き」みたいに感じたことがないのだ。強いていうなら「そのとき見ている城がいちばん好き」となるのだが、この答えは少々キザで、口にしにくい(笑)。 とはいえ、歩いていて「楽しいなあ」「来てよかったなあ」と、しみじみ感じた城はある。その代表が、伊勢の松坂城だ。 松坂城を築いたのは蒲生氏郷である。近江に生まれた氏郷は、織田信長・豊臣秀吉に仕えて頭角をあらわし、天正16年(15