筒井康隆の著書に『不良少年の映画史』がありますが、単行本も文庫もカバーにはイラストでエノケンが描かれています。このことからも筒井が愛した昭和10年代の映画を代表する顔が、エノケンだったことがわかりますね。  日本初の本格的トーキー映画とされる『マダムと女房』が公開されたのは昭和6年(1931)ですが、それから3年後の昭和9年(1934)にエノケン初の主演映画が製作されます。 映画の製作といっても、当時はエノケン劇団の芝居が大人気で中止するわけにもいかず、午前中は外での撮影、午後は舞台、夜は撮影所のセットでの撮影と、ほとんど寝る間もなく動き回っていたエノケンでしたが、その努力が報われて映画は大ヒ