私小説は、近代日本文学の独自のジャンルだと言われています。当時の男性作家たちは、同じように文壇にいる作家たちを登場させて身内の話を書きました。つまり、現代のゴシップ記事に似た表現方法として私小説は始まりました。 そこには恋愛の話も多く、たとえば、元祖私小説と言われる田山花袋の代表作『蒲団』(1907)があります。こういった古い私小説の中に、女性は男性作家の恋愛対象や妻という形で登場します。しかし、私の「私労働小説」には恋愛も蒲団も登場しません。女性が男性の客体ではなく、主体として自分を書くという姿勢です。 同時に、この本は「労働小説」でもあります。 今日、仕事について書いた小説は、俗に「お仕事