前稿「名古屋城の木造天守再建問題を考える(後編)」で筆者は、資料に基づいた復元を行う場合でも、バリアフリー化には配慮すべきだ、という意見を述べた。これは、日本社会に暮らす一市民としての立場と、城の研究に携わってきた立場と、両方からの意見である。 一方で筆者は現在、一人の城好き・歴史好きという立場から執筆等の活動をしている。本稿では、そうした立場から名古屋城天守の再建事業を考えたとき、筆者がもっとも危惧する問題を指摘したい。 ズバリ結論から述べる。名古屋城天守がバリアフリー化に配慮しないまま木造再建されると、それが「先例」になってしまう怖れがある。どういうことか? 日本全国には数多くの天守が建っ