ウクライナの首都キエフで、地下鉄に乗ったことがある。取材で当地に滞在していた時のことだ。その駅で迷子になった。地下が深く、複雑に入り組んでいて、出口に向かっていたつもりが、どこを歩いているのかわからなくなり、気が付くとトンネルのようなアーチ型の低い天井の下を独りで歩いていて、急に不安になった記憶だ。それでも、人影を見つけてあとをついていくと、人混みの先に長いエスカレーターがあって、ようやく地上に出られた。そこは私が想像していた街の場所とはまったく違っていた。