『森瑤子の帽子』は、時代のアイコンだった作家の実像に迫った力作評伝だ。本書を読み終えて脳裏に浮かんだイメージは、荒野をたったひとりで進んでいく女性の後ろ姿である。哀しみも挫折も、人生をまるごと背負ったその背中は本当にカッコいい。森が創った言葉を借りれば、まさに森自身が「ハンサム・ウーマン」だった。