「教育のための実践」が練習登山なのに対し、「実践のための教育」は事業拡大を視野に入れた本番の登山である。もし、練習登山で事業を大きくできる手ごたえをつかんだなら、「実践のための教育」で改めて教育を受けながら本格的な起業に踏み出す。そのための環境を「実践のための教育」では用意している。例えば,カリフォルニア大学サンディエゴ校との連携で導入しているマイクロMBA、WASEDA-EDGEの時から中心的プログラムとしているビジネスモデル仮説検証、その発展版として先程紹介した多摩美術大学との連携で開発しているリーンプロトタイプなどである。

練習登山での小さな失敗体験を成功のステップに

 練習登山にあたる「教育のための実践」は、民間企業の協力を得てインターンプログラムとして行う。具体的には、創業以来約20年にわたり、起業家や経営者向けにコンサルティングや教育研修の支援サービスを手掛けてきた企業のバックアップを受け、WASEDA EDGE-NEXTの受講生が自らビジネスを運営していく。

 もちろん、希望すれば誰でもインターンプログラムに参加できるという甘い話ではない。約半年におよぶ授業の中で受講生が立案した事業計画を審査し、選抜されたものだけが「実践・起業インターン」と呼ぶインターンプログラムに進める(図2)。

図2 実践・起業インターンの概要

 このインターンプログラムでは契約書作成や経理から、営業活動や取引先との交渉、事業を円滑に推進するためのチームマネジメントにいたるまで、会社運営のすべてを1年がかりで体験する。ただし、起業から約半年後に会社の運営状況や事業性を客観的に評価し、インターンプログラムに最後まで参加できる受講生をさらに絞り込む。

 酷に感じるかもしれないが、思うような評価が得られず、ふるいにかけられるスタートアップ企業は珍しくない。むしろ、練習登山とはいえ、現実と同じく常に競争環境にさらされること、さらにその中で小さな失敗体験を積むことは、本番登山での成功のステップにつながる可能性がある。