デジタルトランスフォーメーション時代に突入した産業界が抱える大きな課題は、イノベーションをリードする人材をいかにして育てるか、である。そこで本連載では、早稲田大学のアントレプレナーシップ(起業家精神)教育プログラム「WASEDA-EDGE」の成果を踏まえながら、イノベーションの担い手育成の勘所を探っていく(連載第1回を参照)。
延べ2000人を超える受講生に対し、受講後の起業への関心度を高め、さらに8件程度の起業事例を達成。2014年度にスタートした「WASEDA-EDGE人材育成プログラム」は一定の成果を上げてきた(連載第2回を参照)。これらの成果を受け2017年度からは、起業の実践力を教育によって一段と高めるべく、WASEDA-EDGEを発展させた新プログラム「WASEDA EDGE-NEXT」を開始した。
(バックナンバー)
価値創出のカギを握る「起業家人材」を育てるには――イノベーションの担い手育成の勘所(1)
(バックナンバー)
体系化した起業家育成プログラムの授業内容とは――イノベーションの担い手育成の勘所(2)
WASEDA EDGE-NEXTでは、キーワードの一つとして「共創エコシステムの形成」を掲げている。起業家人材の育成で3年間の実績を積んだ早稲田大学の教育プログラムという一大学の枠を超え、人材の育成や教育などの面で特色ある複数の大学などと幅広くコンソーシアムを形成している。それぞれの強みを結びつけることで、起業家人材を協働して生み出すと同時に、新たなビジネスをともに創り出すのが大きな狙いである。
コンソーシアムに他の3大学などが参加し相互連携
WASEDA EDGE-NEXTコンソーシアムには、協働して起業家人材を育成する機関として、山形大学、東京理科大学、滋賀医科大学が参加している。協働機関の人材との相互連携により、起業家としての意欲と起業に必要な知見を身につけた人材が、高いモチベーションの下で実際に起業するチャンスを膨らませることを期待している。
有機ELや有機太陽電池の研究開発に携わる人なら、山形大がWASEDA EDGE-NEXTコンソーシアムに加わることで期待される成果を想像できるのではないないだろうか。山形大は2011年に「有機エレクトロニクス研究センター」を開設し、有機ELなどの分野で国内外の研究を牽引してきた。さらに2013年には「有機エレクトロイノベーションセンター」を開き、開発した技術の事業化に向け取り組みを加速している。コンソーシアムを通じた山形大との相乗効果により、先端技術分野の起業促進が見込める。
東京理科大は、アントレプレナーシップ(起業家精神)教育の一環で、米マサチューセッツ工科大学の地域起業創生加速プログラム(MIT REAP)を導入し、イノベーション主導型の起業家育成を手掛けている。特に、海外事業展開も見据えた理工系のシーズに基づく起業家養成で連携を図っていくことが期待される。
滋賀医科大と連携することで、医療分野におけるシーズやニーズの見識を深められる。このことは医療系ビジネスで起業を目指す受講生が、ビジネスモデルの検証やより実効性が高い事業化アイデアを創出するのに役立つ。