モチベーションだけでなく対話力や交渉力も高める

 それぞれのステージのカリキュラムをみていこう。

 Stage1は、起業家マインドの醸成ステージと位置付け、「起業特論」や「グローバルコミュニケーション」といった基礎的な講座を設定した。例えば起業特論では、起業経験者らをゲスト講師に招き、起業から事業を軌道に乗せるまでの道のりなどを講義する。ハイテクベンチャーの事例を研究し、最先端の研究成果やユニークな技術を生かした事業に不可欠な知財戦略も学習する。

 業界で注目されている起業家と対面でインタラクティブなやり取りをする中で、何より起業へのモチベーションを高めると同時に、起業や新規事業を具現化することで実現可能な未来の社会を描く能力を養うのが狙いだ。これまでに、空きスペースの貸借をインターネットで仲介するシェアリングエコノミー事業を手掛けるスペースマーケットなど様々な分野で活躍する起業家を招いている。

 グローバルコミュニケーションでは、米シリコンバレーのベンチャーや米スタンフォード大学など海外から講師を招聘。英語による少人数のグループワークを通じて、人を惹きつける対話や丁々発止の議論など、論理的なプレゼンテーションやディスカッション、ネゴシエーションの力をつける。ゼロからビジネスを立ち上げるうえで、理解者や協力者を増やすコミュニケーションのスキルが大切なことは想像に難くないだろう。

アイデアをビジネスの“種”にまで昇華させる

 Stage2の「アイデア創造」にはデザイン思考とゲーミフィケーションを組み合わせた授業もある。

「ビジネスアイデアデザイン(BID)」では、学生チームは毎週アイデアの発想法を学び、毎週ピッチを行うことになっている。毎週のピッチで出されたアイデアは、他チームによって値付け(入札)が行われる。各チームには一定のバーチャルな所持金が配分されているので、入札を繰り返す中で、発想力のあるチームの所持金額が増えていくという仕組みである。

 ユニークなのは、バーチャルな環境に閉じない点である。8週の授業のうち、7週目まではバーチャルな所持金による入札という模擬だが、最終週の授業後では、上位チームにリアルBIDというコンペティションに参加する権利が与えられる。そこには第一線で活躍中の起業家やベンチャー投資家がゲスト参加し、見込みのあるアイデアがあれば、現実に入札してもらう。こうした実践形式の講義によって、アイデアを単なる思いつきに終わらせず、事業化が見通せるビジネスの“種”にまで昇華させる経験を積むことができる。