Think Labは観葉植物が多く、家具はモノトーンに統一されており、しかも環境音楽が流れている(筆者撮影)

 アイウエア専門店「JINS」を展開するジンズが「集中力」を売り始めた。東京・飯田橋の本社に新しく会員制ワークスペース「Think Lab(シンク・ラボ)」を開設。「世界で一番集中できる場所」を売りにしてサービスを展開中だ。「日本の生産性向上や働き方の議論に、集中力の観点は不可欠」と語るのはJINS MEMEグループマネジャーの井上一鷹氏である。なぜ“眼鏡屋”が会員制ワークスペースを提供するのか。なぜ集中力に着目したのか。トリガーになった眼鏡型ウエアラブルデバイス「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」の話を交えつつ、デジタル技術とビジネス、そして働き方の未来を展望する。(聞き手は高下 義弘)

眼鏡型デバイスでデータを収集

――これほどシンプルで、しかも統一感が行き届いたレンタルオフィスは珍しい、という印象を受けました。しかし眼鏡のジンズが会員制ワークスペース、というと、奇妙に感じます。

井上一鷹氏(以下、敬称略) これには経緯があります。私たちは2015年に「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」という眼鏡型のウエアラブルデバイスを発売し、人間活動の様々なデータを取得してきました(筆者注:「JINS MEME」の仕組みや機能については次ページの説明を参照いただきたい)。その取り組みの1つとして、着用した人の集中力を計測し続けてきたのです。

 データを集めた結果、いろいろなことが分かってきました。月曜日と金曜日は集中の度合いが低いとか、集中度が高まる時間帯には個人差がある、といった具合です。

 計測したデータからも見えてきたことなのですが、総じて問題だと感じたのは「現代人はオフィスで集中できない働き方になっている」ということです。集中しなければ、良いものは生まれない。でも、集中できる環境が見当たらない。ならば、まずは当社のオフィスとして「世界で一番集中できる環境」をつくろう、という発想に行き着きました。さらには開発の段階で他社様からも使いたいという要望が多かったため、社外に向けて会員制ワークスペースとしても開放したというのが現在までの経緯です。