金融リテラシーの底上げが自分に課された使命

――Finatextは個人投資家を想定した株価予想やFX疑似体験のアプリから、資産運用の最適なポートフォリオを提案する金融機関向けロボットアドバイザーの提供まで、BtoCとBtoBのビジネスを手広く手掛けてきました。ついには、自社グループで証券業に乗り出し、金融サービスのプラットフォーマーも視野に入れる。そのモチベーションはどこから来ているのでしょうか。

 ロンドン時代にさかのぼります。東京大学経済学部卒業後に英ブリストル大学でコンピュータサイエンスを学び、ロンドンのドイツ銀行に新卒入社しました。2009年9月のことです。当時はリーマンショックの影響で、金融市場の環境は最悪でした。

 海外にいると分かるのですが、日本には素晴らしい企業がたくさんあるんです。それにも関わらず、日本企業はROE(自己資本利益率)が低いなどの理由から評価されず、日本のマーケットに対する投資家の興味は薄れていました。なんだか馬鹿にされているような気がして・・・。正直、腹立たしさを覚えました。

――メガバンクなど大手の株価が軒並み、底なしに下がる時期がありましたね。

 どうして評価されないのかを日々考え続けた結果、大きく3つの原因に行きつきました。起業家が少ないこと、長引くデフレ、そして総じて低い金融リテラシーです。

 特に最後の金融リテラシーは、長年にわたって日本で掲げられてきた「貯蓄から投資へ」の動きを阻み、結果として日本のマーケットのプレゼンスを下げる原因になっている。同時に、金融リテラシーを底上げして貯蓄から投資への流れを生み出すことこそ自分に課された使命だと感じ、起業に踏み切りました。

――最初にリリースしたコミュニティアプリの「あすかぶ!」や「かるFX」は、金融リテラシーを高める狙いがあった?

 株やFXに興味を感じた人に手軽に使ってもらおうと考えました。市場で売買する機能は持たせませんでしたが、取引を疑似体験しながら自然と金融サービスの知識を身に付けられる。その中から実際に株やFXの取引を始めるユーザーが出てきて、投資に成功したといった情報がコミュニティで活発に交わされるようになれば、貯蓄から投資への流れを作り出すことにつながります。

――国内証券業への参入と並行して海外での事業展開も進めている。当面のゴールはどこに設定していますか。

 目下の目標は、証券サービス向けプラットフォームでナンバーワンになることです。ベンチャーの中で1番ではなく、業界のトップですよ! 金融サービスの再発明をするうえで必要があれば、将来的に銀行も作りたい。

――銀行ですか!?

 数年前に銀行を作るなんて言ったら、世間に笑われて信じてもらえなかったかもしれません。しかし、BaaSを開発して証券業に参入できた。銀行だって決して非現実的な話ではないんです。

林 良太(はやし・りょうた)氏
Finatext代表取締役CEO
2008年に東京大学経済学部卒業。2009年、日本人初の現地新卒でドイツ銀行ロンドンに入社。Electronic Trading System部門を経て、Global Equity部門にてロンドン、ヨーロッパ大陸全域にて機関投資家営業に従事。2013年より国内ヘッジファンド大手のGCIに参画。1年で同社の海外ビジネスを急拡大させた後、2014年Finatextを創業。