――株価チャートの見方など投資の基本テクニックを学んで株式を売買するのではなく、リアルタイムで流れるタイムラインの情報を参考に投資する。確かに新しい発想だと思いますが、ニーズがありますか?
林 株式投資に興味があるすべての人にSTREAMが“刺さる”とは考えていません。一方で、いろいろな情報を提供する証券会社のアプリを見て、株の取引は難しすぎると感じている人が少なくないことも事実です。STREAMは、興味はあるけど株式投資に踏み出せずにいる人、スマートフォンで手軽にピピッと取引したい人などのニーズに応えられると思っています。
多様なニーズに応えるためのプラットフォームを提供
林 これからの金融サービスに求められるのは、マスカスタマイゼーションです。投資経験や目的などに応じたさまざまなマイクロサービスを生み出し、多様なユーザーのニーズに応えていく。
スマートフォンの世界を見てください。単機能のアプリがたくさん登場して、個々のユーザーのニーズを満たしている。クラウドサービスも同様です。例えば、米Amazon.comのAWS(Amazon Web Services)は数多くのマイクロサービスをラインナップしています。
もちろん、当社が単独で金融サービスのマスカスタマイゼーションを実現するのは容易ではありません。そのため、証券サービスのプラットフォームとして多くの企業に使ってもらう想定で、システム基盤となる「BaaS(Brokerage as a Service)」を設計しました。
スマートプラスのSTREAMは、あくまでもBaaS上で動くアプリの第1弾です。アプリ開発に必要なAPI(Application Programming Interface)は提供しますので、いろいろな企業にBaaSを利用してもらい、それぞれ特色を打ち出したマイクロサービスを手掛けてほしいと考えています。
――金融サービスはこれまで、1社でありとあらゆるサービスを提供してきました。
林 しかし、成長の勢いに限界がみえてきた。業界の枠を超えたコラボレーションは、もはや避けて通れないでしょう。
――BaaSの利用企業として、どのような業種を想定していますか?
林 鉄道や航空といった運輸業、旅行業、ゲーム業界など非金融業界の利用を考えています。
株取引ありきで投資を始めてもらうのではなく、何らかの主目的を達成するための手段として、顧客に金融サービスを使ってもらう。例えば、投資で大きな利益が出たらハワイ旅行やヨーロッパ旅行に行き、利益が小さければ国内旅行に行く。BaaSの利用企業が自社でアプリを提供するか、スマートプラスが展開するかを詰める必要はありますが、そうした金融サービスがいくつも出てきたら面白くないですか?