暗号資産ビットコインから始まったブロックチェーン技術は、伝統的な金融にも応用され始めてきている。ブロックチェーンを使った金融商品の代表例がセキュリティトークンだ。セキュリティトークンはデジタル証券ともいわれ、さまざまな資産を証券化し、ブロックチェーン上で管理されている。このセキュリティトークン発行において、国内有数の立ち位置にあるのが、野村ホールディングス(HD)傘下のBOOSTRYだ。
大企業内から金融ベンチャーを創業する難しさ、魅力、そしてどのような世界を実現しようとしているのかを、BOOSTRYの創業者でもある佐々木俊典社長に聞いた。
<ラインアップ>
【前編】野村HD傘下でデジタル証券事業を担うBOOSTRYの佐々木社長が抱く壮大な野望(本稿)
【後編】野村HD傘下のBOOSTRY社長に聞く、分散型金融の実現に立ちはだかる「壁」とは
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野村HDという大企業の中でBOOSTRYを創業した理由
――企業内ベンチャーは増えていますが、難しさもあります。野村HDも企業内ベンチャーや合弁の形でリテール向けのネット証券に何度もトライしましたが、なかなかうまくいかなかったという歴史があります。なぜ野村HDという大企業の中での創業を選択したのですか。
佐々木俊典氏(以下敬称略) BOOSTRY創業前は、野村ホールディングスの新規事業部署と新規事業を創出する子会社に3年ほど所属していました。新規事業を創出する子会社は、分散型金融をやりたいと思っていて、そのPoC(概念実証)的なことを行う組織がほしいということで立ち上げたものです。
ちょうど、各社からブロックチェーン事業が出てきたタイミングで、本格的に行うには資金も必要になってくるし、サービスもリリースしなくてはなりません。組織だってやるときに必要なものが、野村HDだけでは作れないので、子会社から事業を切り出して、野村総合研究所(NRI)と合弁会社という形でBOOSTRYをスタートしました。
BOOSTRYのミッションは、まず資本市場の拡張です。いわゆる株、債券などで資金調達が行えるマーケットがありますが、今のプレーヤーで今のビジネスをやっていたら、今以上にはなりません。デジタル証券を使って、現状の資本市場とは違うところからパイを持ってくることを目指しています。
そんな中、少人数で外に出てベンチャーでスタートしたら、われわれのミッションである資本市場の拡張を行うのに必要なプレーヤーが集まってくれるか? と考えると、常識的に考えるとすごく難しい。
現状、大企業の庭で作られているのが資本市場です。BtoC向けのサービスは、極端な話、ユーザーがアプリをダウンロードしてくれれば勝算がありますが、BtoBサービスは、法人の方々を巻き込まなければなりません。それは大企業の中でやるほうが勝算が高いでしょう。
分散型金融も、法人間からスタートして最終的に分散型に広がっていくというイメージを持っているので、既存の金融機関の中からやるほうが、お客さまを取り込みやすいと考えています。