暮れも押し迫った12月18日夜、中国共産党中央委員会機関紙『人民日報』のインターネット版が、ほとんど目立たない形で、一本の「社会部ネタ」の記事を配信した。タイトルは、「犯罪者・労栄枝の死刑を執行」。だが、私は思わず目を留め、感慨深くその記事を貪り読んだ――。 労栄枝(ろう・えいし)という名を聞いても、いまの中国の若者たちもピンと来ないに違いない。だが年配の中国人、それに私のような1990年代の一時期を中国で過ごした人間にとっては、「ずしりと重たい記憶にある名前」だ。当時、「魔女」だの「鬼女」だの言われ、中国を震撼させたからだ。 彼女は1974年、中国中部の江西省九江市に、5人きょうだいの末っ子