*前編〈江戸時代から中国人を魅了してきた三陸のアワビ〉からの続き 筆者の手元には水上助三郎の功績を後世に残したいとの思いから刊行された『水上助三郎伝』がある。20年ほど前に吉浜鮑のことを取材しに吉浜へ行った際、地元漁協の古参の理事から「三陸にもこんな面白い男がいたんだよ」と譲り受けたのだ。 東京にあった大日本水産会が資料を基にまとめ、昭和36年11月に発行したもので、416ページにも及ぶ貴重な資料だ。オットセイの猟について年度別に詳しく書かれていたり、海賊に襲われて戦った経緯が記録されていたり、嵐で難破しそうになったエピソードが紹介されていたりと盛りだくさんの内容である。その中には吉浜鮑を復活さ