SFが現実に レーザー兵器、米軍でついに実用化迫る

レーザー兵器のデモンストレーションを行う米海軍の輸送揚陸艦ポンセ(2014年11月16日撮影、米海軍提供)。(c)AFP/Navy Media Content Services/John F. Williams〔AFPBB News

時代の波に乗り遅れる日本の防衛力整備

 時代の変化は速い。そのため、一国の防衛に当たる者はその変化を見極め、少なくとも10年先を見て行動しなければならない。

 しかし、時代の変化を見ていない者、あるいは、どうせ1番にはなれないから、後から出来上がったものを購入すればいいと考えている者には時代の変化は見えない。

 ローマ時代のカエサルが「人は見たいと欲するものしか見ない」と言ったことは真実である。

 経済活動においてもイノベーションは必須だが、こと防衛においては「破壊的イノベーション」が死命を制する。

 ある日、ゲームチェンジャーなるものが出現し、現状の防衛力において破壊的イノベーションが起きると勝敗は一変する。

 しかし、中国の脅威を脅威と感じたくない日本人は、急激な技術革新に対応しないと国が亡びるかもしれないと言う話に耳を傾けず、相変わらず防衛に新たな予算を投入しない。

 そして、いたずらに時が流れるが、決して時代は日本を待ってくれない。

 実に「今がその分水嶺」であり、今年末に策定される「防衛計画の大綱(防衛大綱)」・「防衛力整備中期計画(中期防)」の意味はそこにある。

 財務省を納得させなければならない防衛省内局や統合幕僚監部(統幕)は、この重大な局面に差しかかっていることを強く認識しているだろうか。

 いま起きている破壊的イノベーションの波に乗り遅れた防衛大綱・中期防を策定するようなことになれば、この5年間で日本は中国に打ち勝つ手段を失い、最も重要な米国との戦略的一体化も夢で終わるだろう。

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 すでに、米中露は10年前から非物理的打撃(レーザ兵器を含む電磁スペクトラムの戦い)における優越の獲得に舵を切っている。

 さらに、従来からの物理的打撃(運動エネルギー弾やトマホークに代表される巡航ミサイル・弾道弾などの精密誘導弾による戦い。極超音速ミサイルやレールガンなどはこの分野のイノベーション)を改良しながら、ハイ・ローを組み合わせた戦いに変化させようとしている。

 日本はすでに10年遅れのハンディを背負っているということだ。

 それ以上に、現防衛大綱の底流には安易な海空優先論と陸軽視論が流れているが、実に時代錯誤だ。

 また、物理的打撃しか考慮に入れない考え方では、中国の物量に対抗するために際限ない防衛費を必要とするだろうし、また、弾はあっという間に枯渇する。

 1発数万円の砲弾は今や精密誘導弾に取って代わられた。その値段は数億円から数十億円と至って高価であるから、日本を射程内に収める北朝鮮の数百発のミサイル対処に必要な精密誘導弾分の予算すらつけていないだろう。

 イージスアショアも最終的な防衛の盾として必要だが、中国や北朝鮮のミサイルの飽和攻撃には対応し切れないという軍事常識を、そして、結局国民は守られていないという厳しい真実を理解すべきである。

 恐らく5年後には非物理的打撃が戦場の主役になるだろう。

 もはや遠い将来の装備ではない。物理と非物理的打撃の組み合わせ、ハイ・ローの組み合わせこそ肝要であり、そのため日本も躊躇なく非物理的打撃力の整備に注力しなければならないのである。

 一方、米国などがすでに10年前から非物理的打撃力の開発に着手しながら量産に入れず停滞していたのを不思議に思うだろう。それはゲームチェンジャーに必須な小型・強力かつ「特殊能力」を持つ電源がなかったからである。

 日本にはその優れた技術を有する企業も既に存在していることは、筆者拙論「陸上自衛隊を恐れる中国軍、最も頼りにする米軍」において言及したところである。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53880、2018.8.23掲載)

 この電源があると、平時でも大災害時のブラックアウトは解消するし、電気自動車は1分以内で充電でき、200キロ以上走行することが可能になる。

 その他、民生に計り知れないエネルギー革命を起こす可能性があるのに、民間企業は従来の電池から脱却する勇気がなくビジネスチャンスを逃している。

 この間、中国はこの技術を含めて買収しようと暗躍したが、まず真っ先に米国がこれを手に入れた。

 日米同盟のために日本政府が米国に技術などを提供することを認めたからだ。しかし、外国企業もすべてを買収していないことは不幸中の幸いだ。

 間違いなくこの2~3年で外国企業の中でも米国はレールガン、マイクロ波兵器(HPMW、すべての電子機器を破壊することが可能)、さらには次元を超えた現代のリバイアサン(海獣)ともいえる潜水艦などを生産するかもしれない。

 レーザ兵器も格段に進歩するだろう。米国は喜々として走り始めたのである。

 一方、ロシアは自前の電源で車載型マイクロ波兵器(車載HPMW)と車載型電波妨害兵器(車載EW)を装備化し、ウクライナでの戦闘やシリアで実績を積んでいる。

 ロシアもHPMWの強化には壁があるはずだが、この2つの組み合わせは理想的だ。

 米陸軍はウクライナでロシアの非物理的打撃に負けたと言われている。中国は不明だが、少なくとも電波妨害は実用化しているだろう。

戦い方の分水嶺:安倍総理の防衛大綱策定指示は的確

 このような中で、安倍晋三総理の指示は、日本防衛において極めて希望を与えるものだ。その裏には、国家安全保障局(NSC)が正しく機能していることが読み取れる。

 大切なのは、防衛省内局や統幕がその指示の本質を見極めているかどうかである。

 9月の自衛隊高級幹部会同での総理の訓示の要点はこうだ。

 我が国を取り巻く安全保障環境は、5年前に想定したよりも格段に速いスピードで厳しさを増している。あるがままを見つめ国民の命と平和な暮らしを守り抜くために最善を尽くさねばならないとして

(1)サイバー空間、宇宙空間、さらに電磁波の領域など新たな領域で優位を保つことが死活的に重要(非物理的打撃への挑戦が死活的に重要)

(2)陸海空と言う従来の区分にとらわれた発想ではこの国を守り抜くことはできない(領域横断の戦いの推奨)

(3)宇宙、サイバー・電磁波といった新たな領域を横断的に活用した防衛体制への変革(新たな領域の戦いに陸海空が横断して参画することを期待)

(4)新たな防衛力の完成に10年15年かけて実現するようなスピード感からの脱却(5年を目標に10年をかけないで新たな防衛力を構築(装備化の実現))

(5) 今までの常識はもはや通用しない

 これらは絵空事ではない。自衛隊の最高司令官たる総理の決意であり、防衛省や財務省は様々な問題や障害を克服して実現しなければならない。

 総理の訓示から読み取らなければならない大切なポイントは次の通りである。

(1)現大綱で想定されているような海空を重視する、WW2のような海空決戦が生起する可能性は極めて低い。また、中国と「対称的」な戦力で対抗することは、際限のない防衛費の増大を招くばかりか、いずれ戦力は枯渇する。

 まして、米国は中国本土の攻撃は核戦争を誘発するとして、中国本土への攻撃を控えることから、「長期戦」になることは必定である。

 また、中国の日本などの第1列島線上の国々に対する攻撃は「短期高烈度決戦(Short Sharp War)」と言われている。しかし短期といえども、2か月以上続くと米国は見積もっており、その間日本は独力で「生き残り、戦い続ける」ことが要求されている。

 すなわち、長期戦向きの陸上戦力からの物理・非物理打撃力を充実し、すさまじい破壊力を持つが永続性がなく短期決戦型の海空戦力を生き延びさせ、重要な時期に陸海空がクロスドメイン(領域横断)で戦う考え方が日本の戦略の基本である。

 防衛大綱・中期防は、この点をしっかり踏まえたうえでの策定が求められる。

 ちょうど、織田信長・徳川家康連合軍が、長篠の戦で武田の騎馬軍団を撃破した理屈と同じであり、またハリス元太平洋軍司令官が海軍の演習であるリムパックに陸自の対艦ミサイル部隊を参加させたのも同じ理屈である。

 「静」と「動」の組み合わせで戦うことは、古代から変わらない「戦理」である。

 この際、防衛大綱論議の中で、「制空権・制海権から制脳権へ」が議論されていることは重要である。

 我々が認識すべき中国との戦いの姿は、最初から海空決戦などはない。戦いの様相は以下に示したように現防衛大綱策定の時と全く異なるものだ。

●米国でも指摘されているように、中国の大衆操作である。中国には外交の概念はなく、中国共産党が指揮する「統一戦線工作」があるのみだ。日米の「脳」に働きかけた無血開城こそ最良の戦略と考えている。

●サイバー攻撃による国家機能の麻痺、インフラの破壊

●漁船などを大量に投入した海上民兵による機雷による港湾の封鎖、狙いをつけた島嶼への精鋭部隊の輸送・上陸(習主席は、ロシアのクリミアでのハイブリッド戦、民兵や階級章をつけていない軍隊の投入の研究を指示)これらに連携する国防動員法に基づく留学生、旅行者などの蜂起

●ドローン、巡航ミサイル、弾道弾などによるレーダ、空港、港湾などに対する飽和攻撃(対処不能にさせる)、古い軍艦、無人機を含む古い航空機による攻撃(弾を撃ち尽くさせる)

●そして新鋭艦、新鋭機の投入となる。ここで初めて海空決戦になるだろうが、既に最終ステージである。

(2)クロスドメイン(領域横断)という概念が急に出てきたように感じるだろうが、自衛隊はすでに10年前から南西諸島の防衛で演習を重ねている。

 その1つは、陸海空自統合での艦船を沈める「対艦戦(ASuW)」であり、2つ目は、地上部隊の対艦ミサイル、防空ミサイルにより安全化された列島線上の空域に対潜哨戒機が飛び、潜水艦、護衛艦と一体化した「対潜水艦戦(ASW)」である。

 わが国のこの領域横断の戦い方は、米国では画期的な海上戦闘のイノベーションとして真剣に捉えられ、米海空軍が中国と戦うための前提となっている。

 この際、大切なことは、陸海空の区分に限定することは意味がなく、陸海空軍の装備は物理・非物理打撃を与えるあくまでプラットフォームに過ぎないということである。

 弾先が重要であり、どの装備がどの軍種に属するかは問題ではない。従って、陸海空がそれぞれの領域において最大限の力を発揮することが大切である。

 この際、特に非物理打撃の分野の領域横断を邪魔してはならず、物理・非物理打撃の指揮・統制のためにAIなどの出番があるのだ。

 前出、ハリス元太平洋軍司令官(海軍大将)は「陸軍が船を沈め、人工衛星を無力化し、ミサイルを撃ち落とし、部隊を指揮統制する能力をハックしたり、妨害できなければならない」と述べていることがクロスドメインの一例である。

 ここに出てくる地上装備は、対艦ミサイル、対空ミサイル、そしてサイバーを含むEW、HPMW兵器であり、まさに物理・非物理打撃の組み合わせである。

(3)それでは、日本にゲームチェンジャーを5年の内に装備化することは可能なのだろうか。

 レールガンは10年以内に日本単独で装備化することはできないだろう。

 また、レーザ兵器は電源の問題よりも、大気中をパワーを拡散しないで一瞬のうちに敵を撃破する技術突破が問題であることから、実用化には少し時間がかかるだろう。

 ただし、宇宙空間での装備化は進むだろう。

 サイバーは国策として取り組むべきである。米中露や北朝鮮にすら大きく水をあけられており、国内法も含め国として決断しなければ進展は望めないだろう。

 一方、ロシアが装備化している「車載EW」と「車載HPMW」は5年以内に日本が実現できるゲームチェンジャーである。

 EWは照射している時だけ有効であるが、低出力で衛星までも妨害が可能である。

 ロシアはシリアに車載EWを配置しているが、概念的に300キロの妨害範囲を持っていると言われ、衛星や巡航ミサイル、精密誘導弾、その他電波を発するものの妨害が可能で、航空戦闘を指揮するAWACSなども妨害できるとしている。

 予備車両も含めて30~40両程度で日本全域の防衛が可能となる。幸いなことに、日本は陸自に電子妨害を任務とする第1電子隊が北海道にあり、やがて第2電子隊もできるようだ。

 これらが装備するものは基本的にロシアのEWと同じであり、従って新たな開発要素はないことから、ロシアのように新たなランドベースの装備品として、日本列島全域の覆域が可能な態勢の早期確立が必須である。

 海空自にとっても有難い存在となることは間違いなく、さっそく来年度から予算化されて当然であろう。

 これこそ、総理が言われる電磁領域の優越を獲得する1番バッターである。

 さらに、ロシアが装備するHPMW車両の日本版が5年以内に装備化することが可能な2番バッターである。

 HPMWは電子機器を破壊するため、ドローンや巡航ミサイル、航空機、艦船、地上部隊などあらゆるものを使用不能にすることができる。

 ロシアは20キロまで破壊できるとしているとしているが、日本は水平線までを意識して30~40キロの破壊を目指すべきであろう。

 そして、車載型を完成させた後は、小型化して航空機搭載型にしたり、大型化して列車移動型や固定型にして300~400キロ程度の破壊を追求すべきであろう。そうすれば、多数の核弾頭搭載の弾道弾を一挙に無力化することも夢ではない。

 このために日本は、先行する海外の有力な軍事産業と協力して実現を早めることも視野に入れるべきであろう。

 いずれにしても、非物理的打撃のEWとHPMWは相互補完関係にあり、日本のミサイル防衛の主役となる2枚看板である。

 おまけに弾は無尽蔵で安上がりだ。これとイージスアショアなどの物理的打撃を組み合わせることにより、初めて総理は「国民を守り切っている」と胸を張って真実を語れるだろう。

 この事業は、総理の第1優先事項であることから、防衛省は2枚看板の実現に勇気をもって挑戦しなければならないし、財務省は十二分な予算を投入しなければならない。

日米連合軍は中国に勝てる!

 中国は、米国に勝利するため、米国が太平洋を跨いで早期に展開し、戦わねばならない不利点を突き、第1列島線周辺で米国と「非対称の戦力」で米国に勝利することを追求し、ある程度の成果を得つつあるようだ。

 その典型は接近阻止・領域拒否戦略(A2/AD)といわれるもので、空母に対して空母で対抗するのではなく、多数の発射母体からの多数の対艦精密誘導弾の飽和攻撃により米空母を戦場から排除すると言うものである。

 これに対して米国は、受け身であった作戦から、物理的打撃の分野では積極作戦へ転換しつつある。

 それはハリス元海軍大将が言った「(潜水艦を含む)船を沈めよ」であり、このため、米軍は、

(1)長射程の対艦ミサイルの増勢に着手し、空母艦載機のためにLRSAM(日本ではF15に装備化予定、射程1000キロ以上で東シナ海全域を覆う)を開発し、さらにこれはイージス艦にも搭載が可能だ。

 また、トマホーク、防空ミサイルなども対艦攻撃機能をつけ、駆逐艦や潜水艦からも多数発射できるように改良中である。まさに、中国の逆手を取った精密弾の飽和攻撃返しである。

(2)潜水艦・機雷などを含む水中の支配を決定的な作戦として位置づけている。

 これに呼応して非物理的打撃である宇宙、空中からの盲目化作戦(サイバー、EW、HPMWなどの攻撃)を作戦の切り札としている。

 当然、日本は、「船を沈めよ」「電磁領域での勝利」を旗印に、国土・国民を守りながら米国との共同作戦で中国に勝利できることを証明し、中国の軍事的冒険の意図を断念させることが戦略の目標となろう。

 さらに日本は「生き残り、戦い続ける」という宿題もある。

 民間飛行場に日米航空機の弾薬・燃料などを広く集積しておくことは極めて優先度が高いものの一つである。

 また、政府は多用途母艦よりも、米軍の作戦と一体となりながら国土防衛するために、護衛艦から多数の長射程対艦ミサイルを発射できるようにし(LRSAMはイージス艦からも発射可能)また、水中の支配作戦を重視することが先決ではないだろうか。

 日本こそ中国と異なる日本版「非対称の戦力」による勝ち目を追求しなければなるまい。

 いずれにしても、少なくとも1~2か月の、日本にとって長期戦に勝ち抜くためには、地上からの物理・非物理的打撃を基盤とし、陸海空の領域をなくしたクロスドメインの戦いに勝利する防衛大綱・中期防でなければならない。

日本の目覚めは来るのか

 政治もマスコミももっと防衛力の実態を正確に伝えるべきだ。

 さらに中国を日本の避けられない最大の脅威としてとらえ、米国のように決然として立ち向かう覚悟がなければ防衛力は何も改善しない。

 南シナ海を実質、中国の影響下に置き、東シナ海に軍事力をシフトしようとしているのに、両手を挙げて日中友好を歓迎できるのだろうか。

 あえて言うが、弾もなく、現有装備も動かせず、人もいないのが日本の防衛力だ。それを承知のうえで防衛予算の話しはなされているのだろうか。

 一方、新防衛大臣が言及した「防衛予算にGDP(国内総生産)比を掲げるのは適切でない」は正しい。

 ならば、いまだに続く財政の枠ありき、あるいは海空陸の順位づけで予算をつけると言う考え方を捨て、「効果的」で「戦理」に合った必要な防衛費を獲得し、総理が明言された「有事に勝てる戦略」のために予算を組んでもらいたい。

 予算の減額を前提とした効率化一本槍ではなく、本当にそれで「有事」に「国民を守り切れる効果的な防衛」ができるのかの視点が極めて重要である。

 予算を効率化するのは「有事に勝てる戦略」と「非物理的打撃への果敢な挑戦」である。