創業以来、独創的な技術でプリンターや時計など数々の分野に革新を起こし続けてきたエプソン。作家・村上 龍の視点で、エプソンの技術に流れる独創性を考察する。(第1回「父の願いと唯一無二のアナログ時計」はこちら、第2回「森を愛する心と、精密技術について」はこちら) 教師だった母は、日曜も、日直という勤務で、しょっちゅう学校に行った。わたしは、必ず付いていった。母は職員室で仕事をして、わたしは図書室で本を読んだ。昼、母が声をかけて、ちゃんぽんの出前を取ってくれた。いつも、ちゃんぽんだった。安価だったし、当時は出前のメニューも限られていた。ちゃんぽんを母といっしょに食べる幸福感は、今思うと、特別なものだ