2018年に創業し、ゲームセンターなどアミューズメント施設の開発・運営を手掛けるGENDA(ジェンダ)。積極的なM&Aを経営方針に掲げ2020年にはセガのゲームセンター事業を譲受、業界に大きなインパクトを与えた。以降、ゲームセンター店舗数拡大、M&Aによる事業拡張などで業容を拡大し、2023年7月に東京証券取引所グロース市場に上場した。GENDAの躍進の軌跡、今後の展望について、代表取締役社長の申真衣氏と、DX部門の責任者で執行役員CTOの梶原大輔氏に話を聞いた。
世界的な金融会社で活躍していた申氏を口説いた一言
申氏は東京大学経済学部を卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。10年以上、金融業界の第一線で活躍し、難関ポストであるマネージングディレクターにまで上り詰めた。GENDA取締役就任後の2019年からはファッション雑誌の専属モデルとしても活躍している。そんな華々しい経歴の申氏が、なぜ新興エンターテイメント企業の社長になったのか。
「片岡に『世界一のエンタメ企業を一緒につくろう』と誘われたからです。『この人は初対面の私に何を言っているのだろう』と思いましたが、挑戦したいというワクワク感が勝りました」(申氏)
片岡氏とは、GENDA創業者で現代表取締役会長の片岡尚氏のこと。ショッピングモール内のアミューズメント施設を運営するイオンファンタジーの元代表取締役社長で、同社の時価総額を231億円から1310億円に引き上げたことで知られる、アミューズメント事業のエキスパートである。知人の紹介で出会ったふたりは、2018年5月GENDAを設立。2019年6月に代表取締役社長に就任した。
「われわれが設立当初に掲げたのは、2040年に“世界一のエンターテイメント企業”になることです。そのためには、自社サービスの売上を伸ばす『オーガニックグロース』だけでの達成は難しいと考え、積極的にM&Aを進めていくことを選択しました。アミューズメント業界にまず狙いを定めたのは、片岡が業界に精通しているというのもありますが、寡占化が進んでおらず、5000~6000億円といわれている市場規模がまだまだ伸びると見込んだからです」(申氏)
GENDAは2018年6月に最初のM&Aとして、スーパーマーケットのインストアプロモーション(店頭販促)などを手掛けるエスピーエスエス(SPSS)の株式を100%取得。そして世間を驚かせたのが、2020年12月のセガ エンタテインメントのM&Aだ。当時、セガ エンタテインメントは約4000人の社員を擁し、197店舗のアミューズメント施設を運営していた。このM&Aは、業界に大きな衝撃を与えた。
それ以降も、宝島(東京都)、ワイ・ケーコーポレーション(福島県)、サンダイ(福岡県)など、各地でアミューズメント施設を運営している企業をM&A。プライズゲームの企画・販売を行っているフクヤホールディングス(東京都)、レモネード・レモニカ(石川県)や日本ポップコーンの親会社INP(東京都)といった飲食企業なども次々とM&Aし、2024年4月現在、グループ企業の数は20社を超える。
「われわれはエンターテイメントの分野でいろいろな事業を展開しながら成長し、世界一になろうという構想を持っています。企業としての最大の強みはM&Aですので、今後もスピード感をもってM&Aを進めていきたいと考えています。業界や業種についても検討しています。現段階で具体的な社名などは出せませんが、今後もアミューズメント業界を中心に、徐々にその輪を広げていく予定です」(申氏)