森永製菓代表取締役社長の太田栄二郎氏(撮影:宮崎訓幸)

 2024年に創業125年を迎える総合食品メーカーの老舗、森永製菓。「ミルクキャラメル」は発売から今年で110年、「マリービスケット」が100年など、ロングセラー商品を数多く持つ同社だが、長期経営計画を初めて発表したのは、意外にも2021年のことだった。新企業理念の策定と併せて「2030経営計画」で打ち出したのは、「森永製菓グループは2030年にウェルネスカンパニーへ生まれ変わります」という決意だった。そこに込めた狙いや変革への道筋について、太田栄二郎社長に聞いた。

社長就任後に初めて策定した「長期経営計画」

――太田社長がトップに就いたのは2019年でしたが、この年は創業120周年の節目でもありました。

太田 栄二郎/森永製菓代表取締役社長

1959年兵庫県姫路市出身。1982年同志社大学卒業後、森永製菓入社。横浜支店や姫路支店、本社営業部を経て1998年に北海道食品支店長に就任し、就任早々から2年連続全国トップの成績を収める。2004年に初代菓子食品営業部長、2009年に冷菓事業本部長、2011年に取締役就任。2014年には初代営業本部長に就任し、取締役上席執行役員、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員を経て、2019年6月より代表取締役社長に就任。2021年には全日本菓子協会会長に就任。
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太田栄二郎氏(以下敬称略) 当社は2000年に100年史を出しているのですが、どの企業にも長い歴史の中で山あり谷ありがある中、森永製菓も業績面で幾多の浮き沈みを経験してきました。

 そこで社長就任にあたって「成長し続ける永続企業」を目標にしながら、「森永製菓の創業精神にいま一度立ち返り、サステナブルカンパニーを目指そう」と全社員に呼びかけました。同時に将来・未来へ向けての森永製菓グループの在り方や存在意義について、社員に意見募集も実施しました。

――森永製菓の創業精神とはどんなところにあるのでしょうか。

太田 創業者の森永太一郎が延べ11年間米国に留学して、日本にはまだほとんどなかった栄養価の高い美味しい西洋菓子を届けたいという思いの下、森永西洋菓子製造所を創業したのが1899年のことです。

 このパイオニア精神やチャレンジ精神に加えて、「利他の精神」もあります。森永太一郎は、人を大事にし、人のために尽くす思いがとても強い経営者でした。社員に意見募集をした際も、森永製菓の存在意義について「利他の精神」を挙げた人が約7割を占めました。その後およそ1年かけて役員とも議論を重ね、新企業理念とパーパスを策定しました。

 かつては森永製菓のビジョンについて、「おいしく たのしく すこやかに」と教えられてきましたが、どちらかといえばこれはビジョンというよりスローガン、メッセージではないかと思っていました。ただし、この言葉も大切な概念ではありますので、企業理念の上に位置するコーポレートメッセージとして掲げ直したのです。

 そして企業理念の骨格をなすのが、「森永製菓グループは、世代を超えて愛されるすこやかな食を創造し続け、世界の人々の笑顔を未来につなぎます」という使命(パーパス)と、目指す未来(ビジョン)、大切にする想い(バリュー)です。

森永製菓グループ企業理念
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 同時並行で策定を進めたのが「2030経営計画」です。それまで当社では3カ年の中期経営計画しかありませんでした。長期計画の検討を試みようにも、なかなか裏付けを伴う業績を上げられなかったこともあり、常に目先の3年を追う計画だったのです。

 しかし、2015年以降はようやく営業利益が100億円を超えるレベルになり、私が社長に就任した2019年は営業利益212億円で過去最高益となり、この利益水準であればそろそろ長期の経営計画も作るべきではないかと考えたのです。