成毛眞が「日本企業はデジタル時代の勝者となれる」と語る理由

元マイクロソフト社長の成毛眞が新著『amazon』で伝えたいこと(後編)

森川 直樹/2018.11.13

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HONZ 代表/インスパイア 取締役ファウンダー 成毛 眞氏

 元マイクロソフト社長にして、「おすすめ本」の紹介サイト「HONZ」の代表でもある成毛眞氏の新著『amazon』(ダイヤモンド社)の読みどころをご本人に語ってもらうインタビュー企画。前回、成毛氏はアマゾンを率いるジェフ・ベゾス氏の経営術の一端を語ってくれた。黒字を出さなくても株価を下げず、あらゆる領域での成長を実現しているアマゾンから、学ぶべき事はたくさんあるのだとも指摘した成毛氏。今回は特に日本企業の経営陣に向けて、メッセージを投げかけてもらった。

▼前編の記事はこちら▼
元マイクロソフト社長の成毛眞が新著『amazon』で伝えたいこと(前編)
成毛眞が「アマゾンはディスラプターにあらず」と語る真意とは?

AWSが圧倒的シェアを獲得できた理由 

 前回、成毛氏はアマゾンの経営の強みとして、利益を出すくらいならばそれをすべて設備投資などに回し、シェア獲得を図っているという点を挙げてくれた。だが、多様な事業の中で異彩を放っているものがある。クラウドサービス分野で圧倒的シェアを獲得したAWS(Amazon Web Services)事業だ。成毛氏の著書『amazon』に詳しく書かれているように、2017年のアマゾン全体の売上は1778億ドル。そのうちAWSの事業が稼いだ売上は174億ドルで、約1割にも満たない。ところが営業利益で比較すると、アマゾン全体が41億ドル、AWSが43億ドルというねじれた結果になる。要はECなど他の事業で計上した赤字をAWSが補っているからこうなるわけだ。そしてこの浮いたお金がアマゾン全体の成長へ向けての設備投資に用いられてきたからこそ、多様な分野の事業が成長を果たしていったといえる。クラウドサービス分野でのこの成功があるからこそ、アマゾンはデジタル時代の勝者として認識されているともいえるが、成毛氏は「とてもシンプルな発想が勝利を呼んだ」と指摘する。

「日本の大手ITベンダーがいつまで経っても、個別の顧客に向けて巨大なデータセンターを築き、効率の悪いビジネスをしていたときに、アマゾンはこう考えた。『日本の企業が夜になって活動を停止している時間、ヨーロッパの企業に同じサーバーを使ってもらえば、1つのデータセンターで複数の企業にサービスを提供できる』と。この実に単純な発想がクラウドサービスのスタート地点であり、アマゾンは世界中に設けたデータセンターのサーバーを、世界中のユーザーに開放。効率よく活用できる仕組みを構築しました。発想は単純でも、物理サーバーをどう切り替えれば論理サーバーとして構築できるか、という部分の技術をベゾスは知っていました。だからこそ、現実のサービスとしてまとめ上げることができたんです」

 巨額の設備投資を伴う事業だから意思決定には経営者の判断が問われる。一定レベルの技術理解を持たない経営者だったなら、画期的な発想に対してゴーサインを出せなかったはずだというのだ。しかし、クラウドサービスの事業にはアマゾンばかりでなく他の大手IT企業も参入していた。並み居る強力なライバルを短期間で抑え込み、シェアを劇的に伸ばした要因は、無謀ともいえる価格破壊だったのだと成毛氏。