たとえば、上司と部下の関係を可視化できたとしたら?

 組織の生産性を高めるためには職場のコミュニケーションが大事だと言われる。だが、そのコミュニケーションが理想的な状態なのか、またどのような状態を目指していくべきなのか、客観的に把握し共通の理解を図っていくのは容易ではない。「空気を読め」などとも言われるが、そもそも“空気”とは何か。“空気”の状態を伝えていけるものなのだろうか。

 そんな中、2018年5月に、村田製作所とKDDIがある実証実験を発表した。村田製作所の仮想センサープラットフォーム「NAONA」(ナオナ)を活用し、職場のコミュニケーションを可視化し、解析していくものだ。

 NAONAの開発に携わった村田製作所 技術・事業開発本部 ソリューションビジネス推進部 推進1課 推進2課 シニアマネージャーの山縣敬彦(やまがた・ゆきひこ)氏に、実証実験の概要とその狙いを聞いた。

IoT時代のセンサープラットフォーム

 村田製作所は、長年、電子部品の開発や生産に取り組んできた。その中には、IoT時代に必要とされるセンサー技術が含まれる。同社は長年培ってきた技術をIoTビジネスに活用すべく、「センシングインフォメーション」への取り組みに舵を切った。

 2015年の秋から、調査や企画をスタート。2016年6月には開発を開始し、2017年9月に仮想センサープラットフォーム「NAONA」を発表した。これまでデジタル化できていなかった空間情報をセンシングし、可視化したデータとして提供するものだ。「モノ」を意識せずに使ってもらえるようにと「“仮想”センサープラットフォーム」と名付けたという。

「当社は、これまで主に製造業向けにセンサーや電子モジュールの提供を行ってきましたが、ITサービスなど別の業界に向けてもハードウエアを活用したデータの提供など行えればと考えてきました」(山縣氏)

仮想センサープラットフォーム「NAONA」の概念図。

 今回の実証実験の流れは、以下の通りだ。