ベルシステム24(東京都中央区)とKDDIエボルバ(東京都新宿区)の会議室に「NAONA」を導入し、社員の面談時の会話データを取得する。会話データはプライバシーの問題もあるので、発言の量や長さ、テンポなどの特徴量のみを抽出し、そこからコミュニケーションの「質」を可視化する。

 また、得られたデータをAPIとして「KDDI IoT クラウド API Market」で提供するほか、取得したデータをもとにKDDIのデータ分析ソリューションにて、商用化を目指した解析を行っていく。実証実験の期間は、2018年5月下旬から9月末まで約4カ月を予定している。

「従来の物理的なセンサーは温度や湿度、気圧や振動などは計測できるのですが、情報を解釈してアウトプットするのは困難です。今回の実験では、クラウドの中で機械学習と組み合わせることで、実際に今何が起きていてどういう状態なのか理解し、そこから会話している2人がどういう関係なのかというところまで情報として表現していきます。そこまでできれば、このプラットフォーム自体を、新たな関係性の“センサー”として提供できるでしょう」(同氏)

今回の実証事件のイメージ図。

人間の“察する”能力の拡張

 そもそも、なぜ「NAONA」を開発し、このような実証実験に取り組むのだろうか。山縣氏は、テクノロジーと人間の関係から振り返る。

村田製作所 技術・事業開発本部 ソリューションビジネス推進部 推進1課 推進2課 シニアマネージャーの山縣敬彦(やまがた・ゆきひこ)氏。

「たとえば、インターネットの普及によって情報を持っているだけでは価値が無くなったように、それをどう使うかに能力を発揮する時代になってきました。この先、人間がテクノロジーに依存して進化する方向を考えると、最後に人間に残るのは“勘の良さ”ではないでしょうか」

 テクノロジーの進化が、今回の実証実験とどのように関係するのだろうか。

「勘の良さや要領の良さは個人の能力の違いと見られます。しかし、そこをテクノロジーで補うと、人の情報格差がなくなったのと同じように、感覚格差、察する能力の差も無くなっていくのではないかと思います。そのような“感覚のアウトソース”を、このセンシングインフォメーションで実現できたら面白いのではないかというのが、一番の出発点でした」