経営幹部は部下に対して口では失敗を恐れずにチャレンジせよと発破をかけるが、実際に失敗すれば人事考課でマイナス評価となり、それを何度か繰り返すと、その後で成功してもその前の失敗によるマイナス評価を挽回できない仕組みになっている。

 社員はその実態をよく理解しているため、よほど高い志と勇気のある人物でない限り、本気でリスクをとってチャレンジすることはない。

 しかもそうしたリスクをとってチャレンジする姿勢すら社内ではほとんど評価されないのが普通である。

 第3に、本社関係部門との連携の悪さである。

 日本企業でよく見られるケースは、本社の社長は自社の将来の長期的な発展継続に危機感を抱いて、新規事業開発のために手を打つ必要があると考え、シリコンバレーに優秀な人材を派遣することを決める。

 派遣された人物が短期間の制約の中で何とか現地のネットワークとの接触に成功する。それを本社関連部門に繋いで、さらに関係強化を図ろうとする。

 それは社長が期待した方向に沿ったものである。それにもかかわらず、肝心の本社関係部門の反応が鈍いことがよくある。

 せっかく紹介した技術協力のチャンスについて、本社サイドは、「そんなのは日本にもある」と言って、自分でコンタクトを取ろうとしない。コンタクトを取っても、本社内で提携の方式などを検討するのに半年もかけてしまう。

 結局、せっかくみつけた提携候補先は離れていく、あるいは他社との提携に動くといった形で、ビジネスが成立しなくなる。

 これがシリコンバレーに進出している多くの日本企業の実態である。シリコンバレーの先端企業は日本企業のこうした問題点を理解しており、一部の先端企業は日本企業と情報交換をしても時間の無駄であると考え、相手にしなくなっている由。

 ただし、例外もある。シリコンバレーで一定のプレゼンスを示す一つのメルクマールは、シリコンバレーでの総投資額が1000億円以上に達することである。

 この条件をクリアしている日本企業はトヨタ自動車、ソフトバンク、楽天の3社である。特にソフトバンクの存在感は大きい。