シリコンバレーに注目し、現地で情報収集を継続する日本企業がこれほど増えているにもかかわらず、それらの企業において新規事業開発の成功や収益拡大を実現した事例はほとんどない。

 その主な原因として以下の3点が指摘されている。

 第1に、駐在員の任期の短さである。多くの日本企業において本社からシリコンバレーに派遣される人員の任期は3年程度である。これはシリコンバレーに限らず、ニューヨークなどに駐在する幹部人材にも当てはまる。

 一般的に社内の評価が高い人材は海外赴任期間が短く、本社勤務が長いというのが多くの日本企業に見られる特徴である。

 3年程度の任期では現地で太い人脈を形成し、新規事業立ち上げの成果を上げるのは極めて難しい。3年間である程度知識を身につけ、情報を収集し、友人も作るが、3年後に帰任し、その後任が着任すると、その人物はまたゼロからのスタートである。

 3年ごとにこれを繰り返していれば、新規事業開発の成果が生まれる可能性は極めて低い。その程度の人物では、現地サイドの企業からも通常は信頼してもらえない。

 したがって、表面的には資金と人的資源を継続的に投入して熱心に新規事業開発に取り組んでいるように見えるが、ビジネス上の成果につながることはほとんどないのが実情である。

 第2に、日本企業の人事考課基準が新規事業開発に向いていないという問題がある。

 シリコンバレーで目覚ましい成果を示す企業の特徴は、多くの失敗を繰り返しながら、その中で数少ない成功事例を見出し、それを大きく成長させるパターンである。

 これに対して、多くの日本企業では、リスクがあることにはチャレンジしない。