【1】経営陣がアジャイルを理解し、企業文化を醸成すること
【2】既存の情報システム部門と別に、イノベーション部隊を建設すること
【3】イノベーション部隊を既存の進捗管理から切り離し、企画と開発を一体化すること
【4】経験のあるアジャイルコーチ、スクラムマスターを招き入れる、もしくは採用すること
【5】アジャイル開発の教育を行い、徐々に経験者をふやすこと
【6】技術力のあるエンジニアを招集すること
【7】コミュニティへのエンジニア参加を推奨し、外部交流を行うこと

 以下ではそれぞれについて解説する。

【1】経営陣がアジャイルを理解し、企業文化を醸成すること

 まず、イノベーション文化を醸成するには、企画・開発が一体化した組織のあり方、現代のソフトウエア文化を支えるアジャイル開発を理解する必要がある。これは、「働き方改革」の文脈で捉えることもできる。エンジニアたちにできる限り自己組織的なチーム運営を任せる。働きやすい環境を与える。ツールやマシンを買い与える。

 よく誤解されるが、アジャイル開発は「無規律」ではない。むしろタイムボックスに沿って強く(自律的に)マネジメントされている。定期的な自己改善と計測を行いながら、市場にフィットした製品やサービスを作り出すための、ビジネスとエンジニアリングのコミュニケーション手法である。これを経営は戦略として利用しない手はない。イノベーションは「内的モチベーション」から発生する。世界を変えたい、と思っている人たちに権限と裁量を与えるのが一番だ。

【2】既存の情報システム部門と別に、イノベーション部隊を建設すること

 これまでの情報システム部門は、どうしてもベンダーをコントロールして計画どおりの成果を予算以内で作る(QCD)に注力してしまっていた。イノベーションの世界では「つくるべきもの」の定義を、ニーズ探索と小さな製品づくりを繰り返して行う(鶏と卵を同時に育てる)のだから、このやり方ではうまく行かない。

 これからは、別途インハウスのイノベーション部隊を新しく組織する必要がある。そこに固定枠の予算をとる。新子会社を作ったり、社長直轄の部署を作ることもあろう。とにかく、小さなチーム(10名以内程度)を、必要であれば複数作る。そして、そのチーム単位で投資する。それをまとめて1つの部署にするのもよい。また、既存事業部署との関係を強くもつチームがあってもよい。むしろ、企業の強みを生かすためにはそうすべきだ。既存事業はその企業の強みであるはずで、そこを生かしながらイノベーションの外部関係を模索して行くのがよい。