書類の電子化とAIが、気づきや着想のきっかけを与えてくれます

田中 潤

ウイングアーク1st株式会社
取締役副社長 COO
シニアエバンジェリスト

システム開発エンジニアとして、主に企業の業務システムやWebアプリケーション、ECサービスの開発に携わった後、2004年にウイングアークに入社。2017年、全社の事業を統括するCOOに就任。国内外のお客様との交流を通して、データに価値を与え、企業のイノベーションを提言する活動を実施している。

日本の電子化を阻む壁

渋谷企業のデータ活用や電子取引、また一般の人々の間でもスマートフォンによる電子決済など、社会のさまざまな場所で電子化が進んできました。しかし海外と比べると、まだまだ遅れています。特にビジネスの世界では、帳票類をはじめ紙の書類がいまだに主流です。電子化が進まない原因は、どこにあるとお考えですか。

田中日本の場合、変化に対してメリットよりもまずデメリットに目が向いてしまう傾向があります。しかも、コンシューマーより企業の方がその傾向が強い。変わることで何か問題が起きるのではとの懸念から、電子化にも前向きに取り組めないのです。

電子化の本質はデータ活用

渋谷紙の情報が電子データになると、企業の中で具体的にどんな変化が起こるのでしょうか。

田中一般に言われるペーパーレス化によるコスト削減は、実はそんなに大きなメリットではありません。むしろ手で書いて、回覧して、決済を受けて……という過程をシステム上で自動化できることの方が重要です。今まで書類を持って回っていた手間や、誰かのところで止まってしまうといったロスが一掃され、大幅に業務効率をアップできるのです。

渋谷データそのものを直接システムに読み込めるので、集計や傾向分析といった、いわゆるBI(ビジネスインテリジェンス)的な活用の可能性も広がりますね。

田中おっしゃる通りです。データに基づく仮説検証や未来予測が可能になります。過去の蓄積を分析し、現在の動きをリアルタイムで把握、未来の動向を予測し戦略を立てる。ビジネスの中に過去・現在・未来を通じた時間軸が生まれ、その上で次の経営戦略を立てていくことが可能になるのです。また売り上げや利益など、戦略の根拠となる定量的データをエビデンスとして示せるので、社内外に対する説得力も大きく向上します。

電子化がビジネスを生む

電子化が日本を変革する大きな原動力になると期待できます

渋谷 和宏

作家・経済ジャーナリスト

日経ビジネス副編集長、日経ビジネスアソシエ編集長、日経BPnet総編集長などを経て2014年に独立。執筆活動の傍ら、TVやラジオでコメンテーターとして活躍。大正大学表現学部客員教授。

渋谷業務の効率アップだけでなく、電子化したデータによって、これまでにない発想が生まれそうですね。

田中身近なところですでに変化は始まっています。SuicaやPASMOといった交通系ICカードが良い例です。ずっと変わることのなかった紙の切符を電子化したことにより、駅員の改札業務が劇的に削減されたばかりか、利用者は券売機に並んで切符を購入する手間が省け、スムーズに電車を利用することができるようになりました。今や、オートチャージのサービスを使えば、カードにお金をチャージする手間すら不要です。さらに、コンビニエンスストアなど多くの店舗で電子マネーとして買い物ができ、キャッシュレスも実現しました。最近では、SuicaやPASMOで購入した履歴データを分析し、利用者の嗜好にあった商品をレコメンドする仕組みなども生まれ、次々にビジネスの幅を広げています。

AIがビジネスを加速させる

渋谷電子化に関連して、AI(人工知能)も注目のキーワードです。書類の電子化とAIの関係をどう捉えていますか。

田中今後は、人間でなくてもよい単純労働や繰り返しはAIに置き換わり、私たちは人間にしかできない創造的な仕事にリソースを集中してゆくことになります。少子化が進む中、日本企業がグローバルで生き残っていくにはクリエーティビティーを磨くことが唯一の道であり、AIは必須のツールとなるでしょう。期待したいのは、これまで紙だった書類を電子化し、そのデータをAIが処理することで、これまでにない気づきや新しいビジネスモデル着想のきっかけを与えてくれることです。

渋谷電子化による業務の効率化やAIを活用したビジネス創造に関心を持ちながら、第一歩をためらっている企業は少なくありません。長年、企業の紙文化の象徴ともいえる帳票を柱に企業のビジネスを支えてきた立場から、一言アドバイスをお願いします。

田中最も効果があるのは、実際に電子化にチャレンジして成功している企業の事例を知ることです。また、経営者がそうした先行例に学ぶとともに、社内にその内容やメリットを伝えて啓蒙していくことも大切です。電子化によって、社員一人ひとりの業務効率が上がり、仕事にプラスになるということを会社側がきちんと説明できれば、企業規模や業種に関わらず、電子化への移行はそう難しいものではないと確信しています。また、そうして社員の間で理解が進むことによって、現場が率先して変革に取り組むようになる例をいくつも見てきました。私たちはこれからも、企業のビジネスに一番近い帳票という分野を中心に電子化を進め、日本の企業をより力強くするお手伝いをしていきたいと考えています。

渋谷業務に限らずさまざまなところで電子化が進めば、日本を変革していく上で大きな原動力になっていくと期待できますね。本日はどうもありがとうございました。

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