OKIデータが挑み続けてきたのは、プリント方式に関する技術革新だけではない。オフィスにおけるプリンター・複合機の新しい利用スタイルを具現化し、顧客ビジネスにイノベーションをもたらすために、多様な機能や、製品に付帯するサービスについても、業界の常識を覆すアイデアを次々と提案してきた。
例えば、その1つが「5年間無償保証」だ。それまで、新規導入したプリンター・複合機について、メーカーの無償保証が受けられる期間は、半年から1年間が一般的だった。これに対しOKIデータは、それを一気に5年間に延長。業界の常識に一石を投じ、ユーザーが安心して長く使える環境を整えた。「構造がシンプルで故障しにくいというLED方式の強みを生かす試みでしたが、それでも当初は、『本当に大丈夫なのか』と社内でも心配の声が上がるほど、チャレンジングなアイデアでした」と栗本氏は振り返る。
しかし、プリンター業界は、数社の大手企業がシェアの大半を占めている。つまり、顧客に選ばれる企業となるには、他社と違うことをやるしか道はない――。そうした判断でサービス開始に踏み切った結果、同社が提供するLEDプリンターの市場台数シェアは、5年後には倍にまで増えることになる。
同様に、「メンテナンス品5年間無償提供」も同社サービスの特徴だ。これは、定着器ユニット、転写ローラ、ベルトユニット、給紙ローラセットといった、定期交換が必要なメンテナンス品を、文字どおり5年間、無償で提供し続けるというもの。プリンター・複合機メーカーのビジネスモデルにおいて、これらの品目の販売は重要な位置を占めていたため、この施策は業界各社に大きな驚きを与えた。
「ここで大切にしたのは、どうしてもメーカー視点になりがちだった従来の業界のアプローチを、お客様視点に180度転換することでした」と同社の森 孝廣氏は話す。同社は、この視点で製品機能も改良。顧客の運用時の課題を解決する「メンテナンスバリアフリー設計」および「クラウドメンテナンスプラットフォーム」という概念も立て続けに打ち出した。これは、プリンター・複合機の液晶画面のガイダンスを抜本的に見直すことで、より分かりやすい操作を実現。同時に、機器をクラウドに接続することで、スマートフォンやPCで問題の解決手順を参照しながら、ユーザー自身が不具合対応を行えるという機能である。
「メンテナンスをアウトソースするのは確かに楽ですが、実はそのためにかかる時間や保守費用がコストのかさむ要因でもありました。そこで、いち早く機器のトラブルをお客様自身で解決できる設計にしてはどうかと考えたのです。これも、LEDのシンプルな構造があったからこそ可能なもの。コスト削減、およびビジネスのダウンタイム極小化というあらゆるお客様の命題に対し、他社には難しい切り口から解決策を提案したものでした」と森氏は振り返る(図1)。

同社は、こうした一連のサービス/機能を「COREFIDO(コアフィード)」というブランドの下で統合的に提供。これまで、数度のアップデートを繰り返しながら、現在に至っている。