昭和30年(1955年)2月17日、午前7時55分。坂口安吾は群馬県・桐生の自宅で脳出血により突然この世を去った。享年48。「自分の生命が尽きるまで、何か書いていたい」と語った戦後文学の旗手は、高知県への取材から戻ったわずか2日後に「舌がもつれる」と倒れ、帰らぬ人となったのである。 林忠彦が昭和22年(1947年)に撮影した有名な写真がある。おそらく、みなさんも見たことがあるだろう。東京・蒲田安方町の自宅書斎で、紙くずと雑誌が散乱する部屋に埋もれるように座る安吾の姿だ。 妻の三千代は『クラクラ日記』にこう記している。「年がら年じゅう書いているか、読んでいるか、家にいる間は紙くずにかこまれてとじ
「舌がもつれる…」戦後の文壇で燦然と輝き燃え尽きた坂口安吾、超ハイペースで書きまくった男に訪れた突然の最期
【連載】「あの人」の引き際――先人はそのとき何を思ったか(8)
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