アーリーンを強制退去させる──シェリーナはそう決心した。葬儀に参列するために借金したアーリーンはその後、ケースワーカーとの面談をすっぽかしたせいで公的扶助の支給額を減らされ、いまでは870ドル(約13万円)もの家賃を滞納していた。だから、そろそろ見切りをつけて次の借家人をさがす頃合いだと判断したのだ。 その月の初旬、強制退去の申請書類を提出すると、12月23日に審理をするという書類が送られてきた。クリスマス前におこなわれる、年内最後の強制退去の審理と思われた。おそらく裁判所は混みあっているだろう。クリスマスの朝、プレゼントを用意できないまま子どもたちの顔を見るよりは、家主にいちかばちかの賭けを
ピューリッツァー賞『家を失う人々』が描く米国の最貧困層(前編)、黒人シングルマザーに強制退去を迫る家主の苦悩
同情すれば今度は家主が追い詰められる
2024.3.2(土)
マシュー・デスモンド
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