日本銀行総裁に、植田和男氏が内定した。彼の名前が出た2月10日に、外国為替市場は一時1ドル=130円まで円高に振れたが、その後は円安に戻り、本稿執筆時点では1ドル=134円近い。このマーケットの迷いが、日銀の直面する問題の難しさを示している。 為替が円安に振れているのは、日銀のYCC(長短金利操作)が長く維持できないと見ているからだろう。インフレ率は4%を上回り、2%のインフレ目標は超過達成された。それでもYCCがやめられない原因は、金融の問題だけではない。 植田氏は審議委員だった時期に、将来インフレになっても引き締めないと約束する時間軸政策を考案した。これは黒田総裁の「期待に働きかける」政策