「最近のクラシック音楽って…何が一番面白いんですか?」という、あまりにもざっくりした質問をよく受ける。一言ではなかなか答えにくいのだが──おそらく一番大きな答えの一つが、バロック・オペラということになるかと思う。 話は筆者がクラシック音楽の取材の仕事を始めた1989年(平成元年)にさかのぼる。 当時はちょうど東西冷戦が終結しつつある頃で、クラシック音楽界にも大きな地殻変動が訪れていた。その象徴が、音楽界の帝王カラヤンと、バーンスタインの相次ぐ死であった。 二人の両巨頭を失って、次に音楽界がどういう方向に進むのか。しばらく混乱期が続く中で、次なる方向性がはっきり見えたのは1992年のことだったと記