写真提供:古賀庸介/共同通信イメージズ
埼玉県、千葉県を中心に「生鮮市場TOP!」や「マミープラス」を展開するマミーマートが絶好調だ。“最高のスーパー”を消費者が投票する「Shufoo!ベストオブスーパー2024」(ONE COMPATH主催)において生鮮市場TOP!が埼玉県と千葉県で1位を獲得した他、新規出店で減益を見込んでいた2024年9月期決算でも過去最高の営業利益(約64.3億円、前期比9%増)を記録した。そんなマミーマートの中期経営計画(2024年9月期~2026年9月期)の“真の狙い”とは。同社 代表取締役社長の岩崎裕文氏に話を聞いた。
前中計で目標に掲げた「新フォーマットの定着」が大当たり
──マミーマートは2024~2026年の中期経営計画(以下、中計)を、「2030年に売上高3000億円(24年9月期現在で1607億円)達成のための先行投資」と位置付けています。本中計の狙いは何ですか。
岩崎裕文氏(以下敬称略) 基本的には、当社がこれまで実践してきた経営戦略をさらに磨いていく、という狙いです。
前中計(2021~23年)では、「新フォーマット(業態)の地域での定着」を目標としていました。これまで当社が主力として展開していたスーパーの「マミーマート」とは異なり、EDLP(Everyday Low Price:毎日商品を低価格で販売する方針、特売やチラシ販売を極力行わない)を軸に安さを訴求しながら、競合と徹底した差別化を図る新たな店をつくることで売上アップを狙ったのです。
マミーマート代表取締役社長の岩崎裕文氏(撮影:榊水麗)
そうして誕生したのが、「食べること/料理が好きな人」をターゲットとした「生鮮市場TOP!」と、「圧倒的地域1番価格」をモットーにしたディープディスカウントストアの「マミープラス」です。
岩崎 2023年時点で生鮮市場TOP!・マミープラスともに埼玉県や千葉県での支持も獲得できたことから、現中計ではこれらの2つの業態でさらに出店攻勢をかけていくことに加え、オペレーション改革や商品開発レベルの向上、人材育成など2030年に売上高3000億円を達成するために必要な先行投資をしていくこととしています。
──具体的にどのような戦略を打ち出していくのですか。
岩崎 「圧倒的地域No. 1店舗の構築」「出店・改装スピードアップとエリア拡大」「人材育成」の3つを柱にしています。
現中計では「定番商品の強化」がトップ・プライオリティ
岩崎 「圧倒的地域No. 1店舗の構築」は、文字通り、生鮮市場TOP!とマミープラスを商圏で最も支持される店に成長させることを意味しています。
生鮮市場TOP!は、食べることが好きな顧客に向けた店舗ですから、青果・精肉・鮮魚の生鮮3品の1商品あたりのボリュームを大きくし、お得感を演出しています。
また、国産のA5和牛や中トロの刺身といった「ハレの日」向け需要もつかめていて、一般的な食品スーパーより商圏が4~6kmほど広いお店になっているのです。2024年9月期終了時点で、生鮮市場TOP!の店舗は埼玉県と千葉県を中心に27店舗まで拡大しました。
加えて、グループ会社の「彩裕フーズ」と連携し、顧客ニーズに合わせて「時短料理」に応える味付け冷凍肉や調理済み冷凍魚などのラインナップも増やしています。
一方、マミープラスの強みは、「商品がとにかく安い」ことです。お客さまの生活に徹底して寄り添うお店を目指し、いわゆる「ケの日需要」、つまり“普段使い”する商品を「圧倒的地域1番価格」で販売しています。商品の多くをアウトパック(店舗外で作られた商品)にすることで、店舗運営コストを削減し、その分売価を切り詰めているわけです。マミープラスは「他店より卵が安いから週1回は必ずくる」というようなお客さまも多く、確実に支持を得られています。

さらに、生鮮市場TOP!・マミープラスともに「圧倒的地域NO.1店舗」に深化させていくためには、「ベーシックな商品」、つまりどの食品スーパーでも販売されている商品の魅力を高め、「他店では買えない」という体験の訴求力を強めていく必要があると考えています。
具体的には、惣菜です。近年、中食需要が高まっており、惣菜が強い食品スーパーは商圏内での支持を集めやすい。私が見るところ定番の惣菜商品の売り上げの多寡と商圏でのシェア率には明確な相関関係があります。そして、当社はこれまで『お弁当・お惣菜大賞』で12年連続受賞商品を輩出してきたように、惣菜には自信がありました。
ただ、これまでは「他店にない惣菜」など尖った商品に注力し過ぎた面がありました。他店にない商品は、強力な来店動機にはなるのですが、あくまで食品スーパーの商売相手は大衆です。幅広いお客さまに支持される商品を、より魅力的なものにしていかなければ、売り上げは上がりません。
そこで、今後は「からあげ」や「ローストビーフ」など誰もが好む定番商品の商品力を高めていこうという方針を掲げています。
──具体的に、惣菜の商品開発の仕組みなどを変える方針はあるのですか。
ピザととり天が爆ウケ
岩崎 商品開発の各バイヤーたちに「ホームランを狙おう」と指示しています。そのために、意思決定の仕組みを少し調整しました。
これまではバイヤーがそれぞれボトムアップで「こんな商品を作りたい」「この素材が余っているから、彩裕フーズのノウハウでこの素材を基にした商品を作ろう」というような形でアイデアを挙げ、そこから取捨選択していました。
今後は競合のトレンドを踏まえつつ、確実に支持を得られる商品をまず設定し、そこからバイヤーたちが具体的な中身をブラッシュアップする、という方式に変えました。
この開発方針の下で成長したアイテムが、店内の焼き窯を使って焼き上げる「ピザ」です。30cm程度のサイズで3~4人前あるのに600円以下というコスパの良さに加えて、生地は国産全粒粉を使っていて、もちもちの食感が特徴です。マルゲリータやシーフード、プルコギなどとバリエーションも豊富なので、幅広いお客さまの支持を獲得できています。
他にも「からあげ」カテゴリーでは、「国産鶏使用のやわらか鶏天」(6個入・430円)は、一般的なからあげとは違い、天ぷら粉で鶏胸肉を揚げることで、鶏肉のジューシーさと旨みを引き出しています。
このように、注力するアイテムをまず設定し、そこから当社の元料理人をはじめとした目利きたちが商品の魅力度を高めていこうとしています。

